同一労働同一賃金に関する最高裁判決
2020年12月01日
10月13日、15日に正社員と非正規社員の待遇差(いわゆる同一労働同一賃金)について、3社の最高裁判決が出されました。
争点となった労働契約法旧第20条は、現在のパートタイム・有期雇用労働法第8条に受け継がれ、大企業は今年の4月から、中小企業は来年の4月から施行となっています。そこで、今後の同一労働同一賃金についての判断基準として世間的にも大きく注目されました。
本稿では、基本的な考え方をお伝えしながら、3社の判決の内容を概説いたします。
1.基本的な考え方
労働契約法旧第20条では、以下の通り記載されています。
●労働契約法旧第20条抜粋
(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
この通り、不合理であるか否かの判断は、①職務の内容(業務の内容および責任の程度)、②職務の内容および配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮することになります。これは、おおむねパートタイム・有期雇用労働法第8条の記載と同じとなっております。なお「その他の事情」について、労働契約法に関する通達では、「合理的な労使の慣行などの諸事情が想定される」としています。また、パートタイム・有期雇用労働法第8条では、「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるもの」としており、どちらも企業ごとに個別具体的に判断することとされています。
2.最高裁判決の内容
今回の3社の最高裁判決を簡潔にまとめると以下のとおりです。
・大阪医科大学事件 賞与・業務上の疾病による欠勤中の賃金
判断→不支給は不合理ではない
・メトロコマース事件 退職金
判断→不支給は不合理ではない
・日本郵便事件 扶養手当・年末年始勤務手当
夏期冬期休暇・祝日給
病気休暇
判断→いずれも不合理
賞与・退職金については、「職務内容等に違いがある」としながらも、「待遇の趣旨を個別に考慮」した結果、「不支給は不合理ではない」と判示しています。しかし、今回の判決が賞与・退職金の不支給を全面的に肯定しているわけではない点は留意すべきでしょう。とくに退職金については、「不支給が不合理となる場合はあり得る」との補足意見や反対意見も述べられています。支給の目的や要件次第では、不支給が不合理とされる可能性は十分にあることから、賞与や退職金については、その意味合いを改めて見直してみるとよいでしょう。
反面、日本郵便事件で争われた手当などは、「職務内容等に違いがある」としながらも、「待遇の趣旨を個別に考慮」した結果、「不支給は不合理」と判示しています。例えば扶養手当について最高裁は、「正社員が長期にわたり勤務することが期待され、生活保障を図り、継続的な雇用を確保する目的」などと指摘し、そのうえで、「相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、支給されるべき」と判断し、契約社員も正社員と同様の手当を認めました。
3.おわりに
今回の3社の判決を見ると、賞与・退職金のように基本給との関連が強いものについては、経営判断も含めて合理性を判断され、一方、諸手当のように支給の趣旨・目的が明確なものについては、企業ごとの趣旨・目的に則ってシンプルに合理性を判断されるようです。まずは、今回の判決を考慮しながら、社内の現行制度に不合理な点がないか確認してみることが肝要です。