障害者雇用についての国の取り組み

2020年11月01日

 昨年度は雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新するなど、障害者雇用についての意識は高まりつつあります。しかし、52,991社の法定雇用率未達成企業のうち、45.5~100人未満企業が27,259社と約半分を占めるなど、中小企業における障害者雇用の取組が停滞しているという問題も指摘されています。本稿では、これから引き上げられる障害者雇用率に触れつつ、中小企業の障害者雇用推進についての国の取り組みについてご案内いたします。

1.障害者雇用率

障害者雇用促進法では、事業主に対し、常時雇用する従業員の一定割合(法定雇用率)以上の障害者を雇うことを義務付けています。民間企業の場合は現在2.2%となっていますが、これから0.1ポイント引き上げられ2.3%となります(令和3年3月見込み)。これにより、障害者を1人以上雇用しなければならない民間企業の範囲が45.5人以上から43.5人以上となります。

2.中小企業の認定制度(令和2年4月1日施行)
中小事業主における障害者雇用の進展に対する社会的な関心を喚起しつつ、先進的な取組を進めている事業主が社会的なメリットを受けることができるよう、障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度が創設されました。
以下の「認定基準」を全て満たす中小事業主(常時使用する労働者が300人以下の事業主)であれば、認定事業主となることができます。

・法定雇用障害者数以上の障害者を雇用し、障害者雇用促進法および同法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がない事業主
・「障害者雇用への取組(体制づくり、仕事づくり、環境づくり)」「取組の成果(数的側面、質的側面)」「それらの情報開示(取組、成果)」の3項目について一定以上の得点を獲得している事業主

【メリット】
①障害者雇用優良中小事業主認定マーク(愛称:もにす)が使用できます
②日本政策金融公庫の低利融資対象となります
③厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークによる周知広報の対象となります
④公共調達等における加点評価を受けられる場合があります


3.特例給付金(令和2年4月1日施行)

週所定労働時間が20時間未満の障害者を雇用する事業主に対する特例給付金制度が創設されました(申請は令和3年度から)。

【支給対象となる障害者】
・1年を超えて雇用される(見込みを含む)こと
・週所定労働時間が週10時間以上20時間未満であること

【支給額】
申請対象期間に雇用した対象障害者の人月数×支給単価

常時雇用する労働者数 支給単価(1人あたり月額)
100人超         7,000円/人月
100人以下     5,000円/人月

4.助成金について
障害者の雇い入れについて代表的な助成金を何点かご紹介いたします。

・トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)
障害者を試行的に雇い入れた場合に受給できます
・トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)
週20時間以上の勤務が難しい精神障害者・発達障害者を、20時間以上の勤務を目指して試行雇用を行う場合に受給できます
・特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース)
障害者雇用の経験がない中小企業で、初めての雇入れにより法定雇用障害者数以上の障害者を雇用した場合に受給できます

5.おわりに

障害者雇用に限ったことではありませんが、多様な人材が活躍できる環境は、多様な発想が新たな価値を創造し、企業の成長力を高めるという効果が期待されています。社会のダイバーシティへの意識が高まっていく中で、いかに魅力的な企業としていくか、国の支援策も活用しながら検討を進めると良いでしょう。

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