テレワークに適した雇用形態とは

2021年01月01日

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言を受け、テレワークを導入する企業が増えました。そして、いまだ感染状況が収まらないなかで、制度を恒常化する企業もまた増えています。

テレワークは、通勤がなくなるといった負担軽減、育児・介護支援などが可能になるといったワーク・ライフ・バランスの向上などの側面がクローズアップされていますが、他方、実際に運用した結果、労働時間管理の難しさや社内のコミュニケーション不足、人事評価等の難しさが課題として挙げられています。

本稿では、テレワークに関して挙げられている課題も見ながら、対応として期待されているジョブ型雇用の考え方とその留意点を概説いたします。

1.テレワークの課題
厚生労働省の検討会資料における「テレワークの労務管理等に関する実態調査(速報版)」によると、「できる業務が限られている」「従業員同士の間でコミュニケーションが取りづらい」ということが課題として挙がっている中で、3分の1弱の企業が「評価が難しい」ということを課題としています。

評価が難しいことの要因としては、「テレワークは非対面の働き方であることから、業務遂行状況を把握しにくい」「業務状況の把握のしづらさから、業務遂行中に発揮される理解力や調整能力、取り組む姿勢などを含めた評価が困難になる」といったことが考えられます。このような課題に対して、従来のメンバーシップ型からジョブ型へ雇用形態の移行を検討する企業が増えています。

2.メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用
2つの雇用形態については、一般的に次のように説明されています。

雇用形態          定義
メンバーシップ型      「人に仕事をつける働き方」
これまでに多くの日本企業が採用してきた雇用形態で、
メンバーの能力や意欲、人柄を評価して雇用する形

ジョブ型           「仕事に人をつける働き方」
事前に職務の内容や権限の範囲、報酬などの労働条件を
細かく定めた「職務記述書」を示し、雇用する形

このようにジョブ型では職務の範囲が厳密に決まっており、社員の年齢や勤続年数に関係なく、職務に対するスキルや能力、成果を重要視するため、テレワークという非対面的な働き方でも適切に評価できる雇用形態として、注目されています。

3.ジョブ型雇用移行の主な留意点
ジョブ型雇用に移行する際、まずやるべきことは「職務の明確化」になります。この明確にする職務は給与と直結することから、すべての職務を分解し、定義し、人へ当てこむには相応の時間と丁寧さが要求されます。また実態と乖離しないよう、組織や仕事の変化に応じ、職務の定義はこまめにメンテナンスしなければなりません。また、職務が予め定められているため、異動や転勤が制限され、さらには移行の際には「任せられる職務のない従業員」に対する処遇も検討する必要があることなど、人事の面で難しい判断を迫られることも想定されます。

4.おわりに
テレワークにおける人事評価等については、ジョブ型雇用が向いている面が多いのは確かです。ただ、一方で留意点にあげたような課題が存在することも事実です。また、メンバーシップ型雇用も長らく日本企業で運用されてきた仕組みだけに、日本の雇用の強みであるとの見方もあります。検討する際には、現状の雇用形態とジョブ型雇用のメリット・デメリットをよく比較して、一般論ではなく自社に合う制度かどうかを、しっかりと判断することが大切と言えるでしょう。

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