雇用保険法改正案の概要

2020年03月01日

 このたび厚生労働省から「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が、令和2年通常国会に提出されました。この法律案は、雇用保険法「等」となっている通り、複数の法律を横断的に改正するものとなっております。本稿では、今回の法律案にどのような内容が盛り込まれているのか、概要をご案内いたします。

1.改正の趣旨
高齢者、複数就業者等に対応したセーフティネットの整備や、就業機会の確保等を図るため、雇用保険法、高年齢者雇用安定法、労災保険法等において必要な措置を講じるものです。
また、失業者、育児休業者等への給付等を行う基盤となる雇用保険制度の安定的な運営等を図るため、育児休業給付の区分経理等の財政運営の見直しを行うと共に、現下の雇用情勢等に鑑み、2年間に限った保険料率および国庫負担の暫定的な引下げ等の措置を講じるものです。

2.高年齢雇用継続給付の改正
・高齢者の就業機会の確保及び就業の促進
(高年齢者雇用安定法、雇用保険法)
①65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置(定年引上げ、継続雇用制度の導入、定年廃止、労使で同意した上での雇用以外の措置(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度)の導入のいずれか)を講ずることを企業の努力義務にするなど、70歳までの就業を支援する。 【令和3年4月施行】
②雇用保険制度において、65歳までの雇用確保措置の進展等を踏まえて高年齢雇用継続給付を令和7年度から縮小するとともに、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置の導入等に対する支援を雇用安定事業に位置付ける。 【令和7年4月施行・令和3年4月施行】

・複数就業者等に関するセーフティネットの整備等
(労災保険法、雇用保険法、労働保険徴収法、労働施策総合推進法)
①複数就業者の労災保険給付について、複数就業先の賃金に基づく給付基礎日額の算定や給付の対象範囲の拡充等の見直しを行う。 【公布後6月を超えない範囲で政令で定める日】
②複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者について、雇用保険を適用する。 【令和4年1月施行】
③勤務日数が少ない者でも適切に雇用保険の給付を受けられるよう、被保険者期間の算入に当たり、日数だけでなく労働時間による基準も補完的に設定する。 【令和2年8月施行】
④大企業に対し、中途採用比率の公表を義務付ける。 【令和3年4月施行】

・失業者、育児休業者等への給付等を安定的に行うための基盤整備等
(雇用保険法、労働保険徴収法、特別会計法、労災保険法)
①育児休業給付について、失業等給付から独立させ、子を養育するために休業した労働者の生活及び雇用の安定を図るための給付と位置付ける。 【令和2年4月施行】
②①を踏まえ、雇用保険について、以下の措置を講ずる。 【令和2年4月施行】
ア)育児休業給付の保険料率(1,000分の4)を設定するとともに、経理を明確化し、育児休業給付資金を創設する。
イ)失業等給付に係る保険料率を財政状況に応じて変更できる弾力条項について、より景気の動向に応じて判定できるよう算定方法を見直す。
③②の整備を行った上で、2年間(令和2~3年度)に限り、雇用保険の保険料率および国庫負担の引下げ措置を講ずる。 【令和2年4月施行】
※保険料率1,000分の2引下げ、国庫負担本来の55%を10%に引下げ
④雇用保険二事業に係る保険料率を財政状況に応じて1,000分の0.5引き下げる弾力条項について、更に1,000分の0.5引き下げられるようにする。 【令和3年4月施行】
⑤保険給付に係る法令上の給付額に変更が生じた場合の受給者の遺族に対する給付には、消滅時効を援用しないこととする。 【令和2年4月施行】

3.さいごに
今回の改正案は、高年齢者の70歳までの就業確保や、兼業・副業を行っている方々(いわゆるマルチジョブホルダー)の保護など、更なる働き方の多様化に対応する内容となっています。
法案が可決成立してから詳細が決まるものもありますが、今後施行が決まっている改正法の新着情報なども含めて、当社ではこれからも随時最新の情報をご案内してまいります。

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