働き方改革関連法案の概要

2018年07月01日

5月31日に衆議院で可決した働き方改革関連法案は、6月20日に国会会期が延長となり、今現在も成立を目指して国会審議が続けられています。
今回は、審議中の働き方改革関連法案の概要と、成立~施行となった場合の企業への影響についてお伝えいたします。

働き方改革関連法案の全体像について
働き方改革関連法案は、多様な働き方を選択できる社会を実現するため、関連する各法律を一部改正するものです。以下に法改正の全体像をご案内します。
I.働き方改革の総合的かつ継続的な推進
働き方改革に係る基本的な考え方を明らかにするとともに、改革を総合的かつ継続的に推進するための「基本方針」を定める(雇用対策法)
II. 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
① 労働時間に関する制度の見直し(労働基準法、労働安全衛生法)
② 勤務間インターバル制度の普及促進等(労働時間等設定改善法)
③ 産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法等)
III. 雇用形態に係らない公正な待遇の確保
① 不合理な待遇差を解消するための規定の整備(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
② 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
③ 行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
それでは次に、Ⅰ~Ⅲの改正内容について一つずつ確認していきます。

働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法の改正)
法律の名称が『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律』に変わります。
雇用する労働者の「職業生活の充実」のため、労働時間短縮やその他の労働条件の改善など、労働者が生活との調和を保ちつつ意欲と能力に応じて就業できる環境の整備に努めなければならないとの責務を定めています。

長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等(労働基準法・労働安全衛生法の改正)
長時間労働是正のため、時間外労働上限規制(下図参照)や中小企業に対する月60時間を超える時間外労働への割増賃金率の見直し(50%以上とする)、10日以上の有休が付与される労働者に時季を指定して確実に5日取得させる義務、健康管理のため労働者の労働時間を確実に把握する義務を定めています。

一方で、フレックスタイム制の「清算期間」の上限を3ヵ月に延長することや、いわゆる「高度プロフェッショナル制度」の創設など、柔軟な働き方の実現に向けた改正も盛り込まれています。
労働時間に関連するもの以外では、産業医・産業保健機能の強化が行われます。産業医の選任義務がある事業場(労働者数50人以上)が対象ですが、産業医に対し産業保健業務を適切に行うために必要な情報提供をすることや、衛生委員会に対し産業医が行った労働者の健康管理等に関する勧告の内容等を報告する義務を定めています。

雇用形態に係らない公正な待遇の確保(パートタイム労働法・労働契約法・労働者派遣法の改正)
パートタイム労働法の対象に有期雇用労働者が加わり、正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関して、個々の待遇ごとに性質や目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨が明確化されました。また、有期雇用労働者については、正規雇用労働者と職務内容や職務内容、配置の変更範囲が同一である場合の待遇を均等にする義務が定められています。そして、派遣労働者については、派遣先の労働者との均等・均衡待遇、一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することが義務化されます。

●さいごに
今回審議されている法改正案は、裁判例を見るに法改正を待たずして対応が求められている内容も含まれています。特に長時間労働是正や正規・非正規間の均等待遇など、企業によっては体質や風土も含めて対応していかなければならないこともあります。中長期的な対策となることも視野に入れて、自社の状況を今一度確認しながら、早めの検討、対応を心がけると良いでしょう。

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