多様な選考・採用機会の拡大ついて

2018年07月01日

本年4月、厚生労働省は、経団連などの経済4団体に対して、多様な選考・採用機会の拡大に関する周知啓発への協力を要請しました。ここでは、要請に至った背景や、選考・採用に係る現状、展望などについて取り上げます。

関連する厚労省指針
今回の要請は、先行する厚生労働省の指針『青少年の雇用機会の確保および職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針(以下、若者雇用促進法に基づく指針)』の改正と『年齢にかかわりない転職・再就職者の受入れ促進のための指針』の策定を受けて、その周知のために行われました。

若者雇用促進法に基づく指針
本指針は、働き方改革実行計画に示された「単線型の日本のキャリアパスを変える取組」の一環として、『新卒者等が希望する地域等で働くこと』『仕事と生活の調和が図られる環境の整備』『企業の人材確保や職場定着』の実現を目的とし、本年3月に改正されました。改正された指針では、事業主は以下の措置を講ずべきとしています。

年齢にかかわりない転職・再就職者の受入れ促進のための指針
企業・労働者双方における中途採用・転職・再就職ニーズの高まりを踏まえ、転職・再就職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行の確立を目的として、本年3月に策定されました。本指針では、国および事業主が行うべき取り組みについて以下のように定めています。

採用選考のこれまでとこれから
我が国の採用選考には、新卒者を『全国転勤を予定する総合職』として『春季一括採用』するという伝統があります。『終身雇用』や『年功序列』を前提とする、世界的に見ればユニークな採用方法です。近年の新卒者の就職内定率は高水準で推移しており、今春卒業者の就職率も、大卒者が98.0%、高卒者が98.1%となっています(4月1日時点)。
一方で、卒業・就職後3年以内に、大卒者で3割強、高卒者で4割強が離職する現状も存在しています。主な離職理由には、職務内容や労働条件におけるミスマッチが挙げられます。終身雇用制が崩壊し、勤続年数より職務内容を重視する欧米型評価制度の浸透が進む現在では、新卒者の初職への執着は薄れ、企業としても一括採用を行うメリットは少なくなりつつあります。新卒者の『春季一括採用』という伝統は、見直される時期に来ているとの見方も多くあります。
また、近年の調査では、新たに仕事に就く者のうち約6割が転職・再就職者であるとされています。急激な少子高齢化の進展や価値観・産業構造の変化も、働き手と雇い手双方のニーズの多様化に拍車をかけ、これからの採用選考における転職・再就職者の重要性はより高まっていくものと思われます。今回の厚労省指針には法的拘束力はありませんが、自社の採用方法や、人事制度における転職・再就職者の取り扱いについて、時代に即したものになっているかどうか、改めて検討してみる良い契機ともいえるかもしれません。

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