注目される従業員の能力開発

2022年07月11日

6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針2022)では、「人への投資と分配」を新しい資本主義に向けた重点投資分野の一つに挙げており、そのなかで企業におけるリカレント教育(学校教育から離れたのち、仕事で求められる能力を磨き続ける社会人の学び直し)による人材育成の強化等の取り組みについて触れています。

中小企業庁が公表した「中小企業白書2022」のなかで、直面する経営課題のうち重視する経営課題について、「人材」を重要と認識している割合が8割超と最も高く、経営者の「人材」に対する関心が高いことが表れています。積極的に能力開発を実施した企業については、ポジティブな結果が出ているとのデータが掲載されています。

次の図は、計画的なOJT研修およびOFF-JT研修の実施状況別に、売上高増加率について見たものです。
いずれも研修を実施している企業では売上高増加率が最も高く、いずれも実施していない企業では最も低いことが分かります。

また、次の図は能力開発に対する積極性別に、従業員の仕事に対する意欲について見たものです。経営者が従業員の能力開発に積極的である企業では、従業員の仕事に対する意欲も高い傾向にあることが分かります。

リカレント教育については、厚生労働省、経済産業省、文部科学省などが支援の取り組みを実施しており、厚生労働省の事業主向け施策をピックアップしてご紹介します。

人材開発支援助成金:事業主が従業員に対して職務に関連した訓練を実施した場合や、新たに教育訓練休暇制度を導入して、教育訓練休暇を与えた場合に、訓練経費や制度導入経費等の助成が受けられます。

生産性向上支援訓練:専門的な知見とノウハウを有する民間機関等に委託し、事業主のニーズに応じて、講義だけでなくグループワークなど効果的な演習を取り入れて実施する訓練を提供しています。

企業内のキャリアコンサルティング(セルフ・キャリアドック):企業内のキャリアコンサルティングの導入に向けて、無料でキャリアコンサルタントによる試行的なキャリアコンサルティングや相談支援を受けることができます。

「人材は重要」というデータがありながら、今後更なる労働市場の縮小により、人材の確保・定着は難しくなっていきます。その点、リカレント教育の実施は、様々な波及効果により人材の確保・定着に資することになりそうです。

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