2024年度、新卒者採用初任給引き上げ競争が激化
2024年06月05日
●初任給の引き上げは「魅力ある職場づくり」の第一歩
昨年に引き続き、大卒の初任給が引き上げられています。
初任給引き上げの流れは、大手企業のトヨタやNTTグループ等だけでなく、中小企業にも波及している状況です。
初任給の引き上げは、「魅力ある職場づくり」の取り組みの一環とも捉えることができ、生産性向上のための好循環の第一歩と期待されます。
「マイナビ 2024年卒大学生就職意識調査」では、2024年卒学生が「行きたくない会社」として、給与の低い会社に続き、転勤の多い会社を挙げました。
コロナ感染拡大以後、学生が転勤の多い会社を忌避する傾向が漸次増加傾向にあるようですが、テレワークや短時間勤務などを導入することでより魅力のある職場となるかもしれません。
●人手不足の理由は?
人手不足が叫ばれるものの、一体、どんな状況で人手不足が認識されているのでしょうか。
ある小売店では、「サービス業の失業者の転職活動が活発だった頃は、人員は補充できた。けれども、コロナ感染拡大状態が収束し、サービス業が再開すると、再び人手不足に陥ってしまった」といいます。小売業では多くの支店をもち、全国展開する場合には、それだけ転勤する機会も範囲を広がります。
大手企業では、リモートワークによって転勤を解消する取り組みも行われていますが、接客を必須とする小売業ではますます人手不足が予想されます。
また、あるマンション管理会社では、「パート社員の賃金を引き上げたものの、年103万円以上は稼ぎたくないという中高年女性のシフト調整に難航した」といいます。
女性や高齢者などを戦力とする会社では、不安定な労働条件と引き換えに、パート社員がワークライフバランスを重視する傾向があり、その欠員補充は正社員によって行われている状況です。
今後は、女性や高齢者も正社員として採用してほしいという希望が増えていくと見込まれます。こうしたとき、パート社員の採用は一層厳しくなると思われます。
さらに、ある地方バス会社では、「労働時間と労働時間の間の休息時間が9時間から11時間に増加した。バスの時刻表どおりに運行できず、人手が確保できるまで臨時の運行時刻でなんとか乗り切った」といいます。
今年4月、働き方改革関連法により、自動車運転の業務に対し時間外労働の上限が設けられました。
働き方改革では、長時間労働を防止するため、勤務間インターバル制度という枠組みで労働時間を管理する方式を採用しています。
勤務間インターバル制度とは、従業員の生活時間や睡眠時間を確保するために、終業時刻から次の始業時刻の間に一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を設ける仕組みを指します。
しかし、働き方改革はあくまで枠組みとなる基準を設定したに過ぎません。
実際、中小企業の長時間労働を解消するためには、業務効率の向上、管理監督者のマネジメント能力、生産性に効果的な評価制度等の見直しが必要です。
初任給の引き上げによる人材確保も大事ではありますが、採用後、人材が定着するための工夫も必至と思われます。
●おわりに
長時間労働をしてはならないという意識改革が行われる一方、現場にしわ寄せが押し寄せている状況では「魅力ある職場づくり」とはいえません。
学生は、学生時代にアルバイトを通じて、現場の状況を目の当たりにしています。
そうした結果が、就職活動の企業選好にも影響を及ぼしているかもしれません。
理想の職場環境とは何か、その実現のためにできることは何か、われわれと一緒に考えてみませんか。