男性育休の現状とハラスメントリスク

2019年08月01日

先日、「男性社員が育休明け2日で転勤を命じられた」という内容がツイッターで投稿されて話題となりました。女性の活躍を促進していくために男性の育児参加は重要になりますが、現状ではまだ課題が多いようです。

1.男性の育休取得状況
育児休業は、1歳に満たない子を養育する労働者が、会社に申し出ることで、子どもが1歳になるまでの間、育児のために休業できる制度で、“男女問わず”利用することができます。しかし、実際の利用状況は、男女差が顕著に出ています。厚生労働省『雇用均等基本調査』によれば、在職中に出産した女性のうち、育児休業を取得した方の割合は、平成19年以降8割を下回ったことがありませんが、配偶者が出産した男性のうち、育児休業を取得した方の割合は、1割に満たない状態です。

2.男性育休のカベに潜むハラスメントリスク
育児休業を取得したことを理由とする解雇や、不利益な配置変更を行うなどの不利益取扱いは、育児・介護休業法で禁じられています。また、同法では、事業主が労働者を転勤させようとする場合には、その労働者の子育ての状況に配慮しなければならないとしています。
企業において育児休業の制度は法律に則って適切に利用されるべきであり、利用を阻害する言動や行為(ハラスメント)は、阻害した個人の問題だけではなく、会社として対策すべきコンプライアンス上の問題でもあります。どのような行為がハラスメントに該当するのかを把握するとともに、従業員に対して周知しておくことが大切です。

■ハラスメントの事例
 解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの
例)時間外労働の免除について上司に相談したところ、「次の査定の際は昇進しないと思え」と言われた
 制度等の利用の請求等または制度等の利用を阻害するもの
例)育児休業を申し出たところ、上司から「男のくせに育休とるなんてありえない」と言われ、休業を断念せざるを得なくなった
 制度等を利用したことにより嫌がらせ等をするもの
例)育児短時間勤務をしていたら、上司から「時短勤務をしている人に、重要な仕事は任せられない」と繰り返しまたは継続的に言われ、もっぱら雑務のみさせられる状況となっており、就業する上で看過できない程度の支障が生じている

3.さいごに
厚生労働省の「平成29年度 仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書 労働者アンケート調査結果」によると、男性の「育児休業を取得しなかった理由」の上位から3番目は「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」(25.4%)となっています。このことより制度を整備するだけではなく、制度が正常に機能する環境が整っていることが重要になることが見て取れます。男性育休取得推進のみならず、前述のハラスメントを防止するためには、職場環境も含めて定期的に状況確認を行うことをお勧めします。

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