労働分野の手続きの電子化について
2018年06月01日
政府は、企業の生産性向上を後押しするため、企業が行政手続きに要する作業時間を2020年までに20%削減する目標を掲げています。その取り組みの推進を図る観点から、各省庁は『「行政手続コスト」削減のための基本計画』を改定し公表しています。今回は基本計画のうち、労働分野の内容をお伝えします。
1.労働分野における基本計画
厚生労働省では、下記の5分野について基本計画を策定しています。
営業の許可・認可に関する手続
社会保険に関する手続
補助金の手続
調査・統計に対する協力
従業員の労務管理に関する手続
このうち、『社会保険に関する手続』と『従業員の労務管理に関する手続』についての概要を確認していきます。
2.社会保険に関する手続
事業主に届出義務のある社会保険手続は123種類あり、大きく分けて以下の3つに分類されます。
A)特定の時期に提出するもの(被保険者賞与支払届 など)
B)定期的または不定期に提出するもの(被扶養者異動届 など)
C)基本的に、1回限り提出するもの(被保険者資格取得届 など)
いずれも電子化の状況は低調で、電子申請の割合が2割を超える手続はありません(具体例として上記手続きの電子申請割合を挙げると、被保険者賞与支払届:12%、被扶養者異動届:7%、被保険者資格取得届:11%)。
これは、届出により紙媒体、CD・DVDおよび電子申請のいずれかを選択できる仕組みとなっていることが、電子申請推進の阻害要因となっているとして、大法人の事業所については原則電子申請を義務化するとしています。
また、義務付けの一方で手続の簡素化や効率化も並行して行われることになっています。紙媒体より電子申請での届出を優先して受付処理を行うことや、マイナンバー連携による届出や添付書類の省略などが計画されており、電子申請を義務付けされていない中小企業に対しても電子申請への移行を促すとしています。
3.従業員の労務管理に関する手続
この分野はさらに、『労働基準法等に基づく手続』と『雇用関係助成金等に関する手続』とに類型化されます。
労働基準法等に基づく手続は、以下3手続の申請件数が多く全体の約9割を占めますが、電子化率は低調です(以下、平成28年実績)。
時間外労働・休日労働に関する協定届(電子化率:0.3%)
1年単位の変形労働時間制に関する協定届(電子化率:0.2%)
就業規則(変更)の届出(電子化率:0.8%)
計画では電子申請の利便性向上や周知活動を通じて、上記3手続の電子申請率を31%とすることを目標としています。
雇用関係助成金等に関する手続は、現状では相談や申請の度にハローワーク等に訪問する必要があります。これについては郵送も受け付けるようにすると共に、オンライン申請については、平成31年度までに具体的検討・準備を進め、可能なものから平成32年度以降順次稼働を目指すとしています。
また、ダウンロード用の申請様式を厚生労働省ホームページに掲載して、パソコン上で書類作成を可能にすると共に、同時に複数件申請する場合等の作業を効率化するとしています。
4.さいごに
労働分野の電子化は、他の行政手続と比較しても、右図の通り利用率の低さが際立っており、手続コストの削減は電子化の推進に依る部分が大きくなっています。そのため、上述の通り電子化の利便性の向上が論議されたと言えましょう。
なお、行政手続の電子化を行っていくにあたり、併せて社内の情報のデータ化も進めることになります。これは通常業務の効率化や省スペース化に加えて、セキュリティーやコンプライアンスの強化にもつながってきますので、「紙での処理、保管が多い」という企業様におかれましては、是非検討されてみてはいかがでしょうか。