職場のインフルエンザ対策について
2018年01月05日
インフルエンザが流行り易い季節となりました。近年では流行が早期化しており、首都圏では昨年9月に早くも学年・学級閉鎖となる学校が相次いでいました。しかしながら、本格的に流行するのはこの時期であることから、引き続きの注意が必要となります。
昨年11月、厚労省は冬のインフルエンザ総合対策を取りまとめ、家庭や職場などで適切に対応するよう呼びかけました。本ニュースでは、企業における対応方法などについて取り上げます。
1.インフルエンザの基礎知識
インフルエンザはウイルスによって感染するもので、主な感染経路は接触感染と飛沫感染であると考えられています。空気感染については、可能性は否定できないものの一般的に起きるとする科学的根拠はないため、企業においては、飛沫感染と接触感染を想定した対策を確実に行うことが必要であるとされています。
※厚労省『事業者・職場における新型インフルエンザ対策』から抜粋
2.具体的な感染防止策
感染防止策には普段の生活の中で実施できるものも多く、感染者と適切な距離を保つことや、手洗い・うがい、マスクをするなどの咳エチケット、感染者の体液が付着した場所の清掃・消毒などで、感染リスクを大幅に低下させることができ、特に、感染者との距離の保持は最も重要な感染防止であるとされています。このような対策を企業が行う場合、まずは、感染が疑われる従業員を休ませる、といった方法が考えられます。この際、感染者が休もうとせず、無理にでも出勤してこようとした場合、企業はどのように対処すべきでしょうか。
企業には従業員に対する安全配慮義務があるため、感染者本人の健康状態悪化を防止し、他の従業員への感染を防ぐという合理的な理由がある限り、医療機関への受診や出勤停止を感染者に命じることができると考えられます。しかし、就業規則にその旨を定めていなければ、命令の実効性や、企業としての一貫性が危ぶまれるかもしれません。可能な限り、事前の準備をしておくべきだと言えます。
3.その他、感染防止命令の一般的な可否について
インフルエンザの感染防止は、従業員に対する安全配慮義務に加え、各ステークホルダーに対する社会的責任という観点からみても、企業に課せられた道義的責任であると考えられます。ですから、感染防止のために企業が発する業務命令には一定の合理性があり、従業員側にこれを拒否するだけの合理的な理由がない限り、感染防止策を強制することができると考えられます。
しかし、感染防止のためであれば従業員にどんなことでも強制できる訳では決してありません。業務命令が従業員の人格や自由、基本的人権を制限する可能性がある場合、制限の合理性や必要性、手段・方法の相当性等を欠くことのないよう、特段の配慮を図ることが必要になります。
例えば、インフルエンザワクチンの予防接種には、確かに発症をある程度抑え、重症化を予防する効果がありますが、完全な予防をするものではありません。また、予防接種の副反応として発熱や頭痛、さらには呼吸困難やけいれんなどの副反応がみられる場合もあることから、これを強制する業務命令はできないと考えるべきでしょう。
4.さいごに
当然ではありますが、いかなる疾病に対しても完璧な予防というものはありません。発症するか否かは本人の健康状態に左右される部分も大きく、インフルエンザに関して言えば、潜伏期間中の方との接触により感染してしまったり、職場での対策を万全にしていたとしても、従業員の家族などがインフルエンザを発症し、結果的にその従業員が欠勤せざるを得ない、とう状況になることも十分に考えられます。
この季節は、ある程度の欠勤者が出ることを想定し、ゆとりある業務計画を立てる他、属人的な業務をなるべく少なくしたり、業務マニュアルを整備し“見える化”を進めるなどの対策を進めておくと良いでしょう。