近時の雇用情勢と雇用継続のための施策について
2020年10月01日
新型コロナウイルス感染症の感染者数は、9月13日に75,000例を超え、未だ沈静化の見えない状況となっております、本稿では、感染症が雇用に与えている影響と国の対策、雇用継続に関する手法一例をご紹介いたします。
1.雇用への影響について
9月1日、厚生労働省は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で雇い止めを含む解雇者数が、8月末に累計5万人を超えたと発表しました。解雇者数の推移は、5月21日に1万人を超え、その約2週間後には2万人に達しました。その後は増加のペースがやや緩みましたが、月1万人程度の増加が続き、8月も約9,000人と、依然高水準となっています。
また、総務省が発表した、7月の労働力調査(基本集計)では、完全失業者数は前年同月比41万人増の197万人となり、6か月連続増で、増加幅は2010年1月以来の水準となっています。
そして、就業者数は6,655万人と前年同月比で76万人減と、4か月連続の減少となりました。
このうち、正規労働者こそ前年同月比52万人増の3,578万人となっていますが、パート・アルバイト、派遣社員などの非正規労働者は前年同月比131万人減の2,043万人となっており、減少幅は比較可能な2014年1月以降で最大となっています。
そして、厚生労働省によると8月28日現在、新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整の可能性がある事業所数は84,220事業所、解雇等見込み労働者数は49,467人となっており、これから先も予断を許さない状況となっています。
2.厚生労働省の施策
そのような状況下、厚生労働省では、雇用を守るために雇用調整助成金をはじめとした各種施策を実施しています。
雇用調整助成金は、9月11日時点で105万8578件の申請があり、総額約1兆3,445億円が支給されました。支給決定は約88%と高率で、支給までの期間も短縮されてきていることから、セーフ ティネットとしてその実効性を評価する声は多くなっています。その雇用調整助成金の特例措置のほか、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金については、本年12月末まで延長されました。
また、小学校休業等対応助成金の対象期間の延長、休暇取得支援助成金(母性健康管理)の要件見直しも同様に12月末まで延長される予定です(9月18日現在)。
3.解雇以外の選択肢の模索を
厚生労働省のほか、国の支援施策が多数実施されていますが、先行きの見えない状況はなお続いています。そのような中で事業を継続していくためには、別の手段での雇用維持も視野に入れておくとよいでしょう。
最近では、「従業員シェア」というワードが話題になっています。従業員の1人当たりの労働(時間)を減らし、複数の労働者で分かち合う「ワークシェアリング」という言葉を聞いたことがある方は多いかと思いますが、「従業員シェア」は、一時的に雇用過剰となっている企業から人手不足が生じている企業へ、異業種間で行う在籍型出向のことです。名の通った企業が、スーパーやデリバリーなどに出向させる話をニュースで見た方もいらっしゃるかもしれませんが、これも雇用を守るための一つの有効な手段となり得ましょう。
公益財団法人産業雇用安定センターでは、「雇用を守る出向支援プログラム2020」と称し、無料で在籍型出向のマッチング支援の取り組みを行っています。従業員シェアを検討する際にはご参考になさってください。