5月病対策について
2019年05月01日
毎年、ゴールデンウィークを過ぎた頃には、「体がだるい」「やる気が出ない」「ふさぎこむ」といった、いわゆる『5月病』の症状に苛まれてしまう方が見受けられます。新社会人の方や異動・昇格をされた方など、生活環境の変化が多いこの時期特有ともいえる課題に対し、会社としてはどのような対策を講ずべきか、今回はその一例をご紹介します。
1.5月病の概要
『5月病』とは正式な病名ではなく、病院では同様の症状について、「適応障害」や「軽度のうつ」といった診断を受ける場合が多い、メンタルヘルス不調の一種です。
多くのケースでは、一過性の症状にすぎず、適度な休息等で改善されるといわれています。
ただし、会社や仕事が苦痛に感じるなど、日常生活に支障をきたしているような場合には、やはり専門医の診断を受けるべきでしょう。
2.原因と対策
5月病の原因には、以下のようなものがあるとされています。
新しい環境についていけない
新しい人間関係をうまく築けない
思い描いていた理想と現実のギャップが埋められない
入社が一つのゴールとなってしまい、次の目標を見失う
注意すべきなのは、係長や課長などへの昇進、支店から本社への抜擢といった、いわゆる栄転とされるものでも、本人にとっては不安やストレスになっている場合がある、ということです。
では、どのようにすれば5月病を回避できるのでしょうか。全国健康保険協会のホームページでは、次の対策を挙げています。
会話でストレスを解消しよう
栄養バランスのとれた食事を心がけよう
質の良い睡眠のとり方
オフの日の過ごし方
要約すれば、「悩みを1人で抱えずに、健康的に過ごす」ことが重要といえます。
3.上司や同僚ができる対策
上述のとおり、5月病の原因の中には“新しい環境への不適応”があり、有効な対策の1つに“会話でのストレス解消”があります。新しい環境で働くことになった人に対しては、上司や同僚が積極的に声をかけるなど、孤立させない職場作りに努めることが必要です。悩みがある様子ならば、まずは受け止めることを心掛け、厳しい指摘や指導などは行わないようにしましょう。また、これまでと同じ仕事をしているのに、能率が落ちているような場合も、5月病の兆候である可能性がありますので、本人の様子を伺いながら会話をし、場合によっては、本人の意思を尊重しつつ、専門医への受診を勧めましょう。
4.会社(人事担当者)ができる対策
会社には、“労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮する義務”、いわゆる『安全配慮義務』があります。上述のとおり5月病の多くは一過性のものとされていますが、メンタルヘルス不調に関しては、その未然予防が重要であることを踏まえれば、5月病への対策も、会社としてしっかりと行うべきであるといえます。
まず、会社ができる対策の1つとして、現状の職場環境を評価し、必要に応じて改善することが挙げられます(ここでいう職場環境とは、『物理化学的環境』(例:騒音、照度、温度、湿度)、『人間工学的側面』(例:作業スペース、作業姿勢)、『人間関係』、『仕事の負荷』(質、量)、『仕事の自由度・裁量権』等を含んだ広い概念です)。
評価・改善は、下記のプロセスを短期・長期のサイクルで回していきながら行うことになります。
①ストレス要因をチェック ②要因を具体的にリストアップして優先順位をつける ③改善計画に沿って対策を講じる ④短期的・長期的にプロセス・結果を評価する
他の対策として、症状が重症化した場合に備えて、会社がとるべき対応についてまとめておくことが挙げられます。まずは、就業規則等で休職に関して規定されているのか、定めてあれば、いつからいつまで休職させ、どのような場合に復職を認め、また退職とするのか、現場の担当者が判断を迷わない記述になっているかチェックしましょう。そして、規定を管理職等のしかるべき人間に周知し適切に運用していくために、研修や勉強会を定期的に行うことも大切です。