今からでも確認しておきたい熱中症対策

2019年09月01日

厚生労働省は、中央労働災害防止協会を始めとする労働災害防止団体などと連携して、『STOP!熱中症 クールワークキャンペーン』を実施し、職場における熱中症予防対策の推進に努めています。まだまだ残暑の残る9月、改めてその対策を確認してまいります。

1.キャンペーンの概要
上記のキャンペーンは5月1日から9月30日までの期間、厚生労働省が中心となって、熱中症予防に係る周知啓発や予防対策セミナーの実施、労働局・労働基準監督署による事業場への周知・啓発を行うものです。この取り組みは従前から行われてきたものですが、今年はこれまでの取り組みに加え、新たに“WBGT基準値に応じた休憩時間の目安”や“緊急時の早めの搬送”について、重点的に周知することとしています。

2.WBGT値(暑さ指数)とは
WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)は、熱中症予防を目的として生まれた指標で、単位は気温と同じく℃で示されますが、その値は気温とは異なります。WBGTは人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目し、熱収支に影響の大きい①湿度 ②日射・輻射など周辺の熱環境 ③気温の3つを取り入れた指標になっています。

WBGTが28℃を超えてくると、熱中症患者が著しく増加するといわれています。上図のように、WBGTの計算においては気温よりも湿度の効果が占める割合が高く、また、熱中症は最終的には人体の熱収支バランスが崩れ体温が上昇することによって引き起こされるため、気温は下がったとしても雨で湿度が上がることもある秋口は、熱中症のリスクがまだまだ高い季節だといえます。

3.会社が行うべき具体的な対応策
第一に、WBGT値を把握することが必要です。値の測定にはJIS規格に適合した暑さ指数計の使用が推奨されています。そこまで外での勤務が多くない会社で、指数計を常備するまでもないのであれば、環境省の熱中症予防情報サイトが提供している『暑さ指数(WBGT)の実況と予測』から、おおまかな数値を把握し、外出予定の従業員への注意喚起を行うと良いでしょう。
WBGT値を把握し熱中症リスクを評価できたら、作業時間の短縮や休憩場所の整備、定期的な塩分・水分摂取等の対策を、リスクに応じて行うようにしましょう。また、対策内容については、教育研修等にて従業員へ周知を徹底すると共に、熱中症予防管理者を選任し、作業現場における責任体制を明確にしましょう。同時に、従業員の体調不良時に搬送を行う病院の把握や、緊急時の対応についても、しっかりとマニュアル化しておくことが必要です。

4.さいごに
平成30年の職場における熱中症死傷者数は、1,178人で、うち死亡者数は29人となっており、平成29年と比較して死傷者数・死亡者数ともに2倍を上回りました。死亡災害の発生状況を見ると、WBGT値計を準備していないために、作業計画の変更ができていない例や、熱中症患者の発見や救急搬送が遅れた例などが見受けられます。
会社には従業員の身体・生命の安全を確保して働かせる義務があります。熱中症対策の労働衛生教育がお済みでない場合には、今からでも管理者や労働者に対して「熱中症の症状・予防方法、緊急時の救急処置、熱中症の事例」などを周知することをおすすめいたします。

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