毎月勤労統計調査の不適切な取扱いとその影響
2019年03月01日
本年1月、毎月勤労統計の調査方法が不適切であったことにより、同調査を元に算定している雇用保険制度等の給付額に影響が生じている旨、厚生労働省から公表されました。その問題の概要と影響をご説明します。
1.統計調査の概要と、他の制度における利用状況
同統計調査は、行政機関が作成する統計のうち、特に重要な統計として総務大臣が指定する『基幹統計』のひとつで、雇用・給与・労働時間の状況を毎月明らかにすることを目的とした調査です。
その利用状況は幅広く、下記の厚生労働省内での利用の他、内閣府による経済分析や、国土交通省による建設工事の労務単価の算定、ILOやOECDといった国際的な機関への報告にも活用されています。
※厚生労働省における利用状況(抜粋)
① 失業給付の額の算定に用いる賃金日額の範囲等の自動的変更
② 労働災害の休業補償額改定
③ 労災保険における給付額算定等
④ 労働基準法第12条第8項の規定に基づく平均賃金の算定
⑤ 労働経済の分析
2.問題のあった調査方法と統計への影響
500人以上規模の事業所については全数調査すべきところ、平成16年から平成30年10月まで、厚生労働省が抽出した事業所名簿に基づく抽出調査が行われていました。具体的には、東京都における「500人以上規模の事業所」の調査対象は、全数調査であれば1,464事業所でしたが、平成30年10月の調査対象事業所数は491事業所でした。
また、平成16年から平成29年まで間、抽出調査であれば統計的処理として必要になる復元もなされておらず、「きまって支給する給与」等の賃金額の公表値が低めに算出されていました。
3.従業員や会社への影響
前述のことにより、毎月勤労統計調査の平均給与額の変動を基礎としてスライド率等を算定している各保険給付額に影響が生じました。そのため、以下の給付金・助成金を受給した方に追加給付が実施されます(追加給付は現在受給中の方も該当する可能性があります)。
【対象となる方】
雇用保険関係 「基本手当」「再就職手当」「高年齢雇用継続給付」「育児休業給付」「介護休業給付」などの給付を平成16年8月以降に受給された方(※雇用保険と同様又は類似の計算により給付額を決めている「政府職員失業者退職手当」、「就職促進手当」を受給された方を含む)
労災保険関係 「傷病(補償)年金」「障害(補償)年金」「遺族(補償)年金」「休業(補償)給付」などの給付を平成16年7月以降に受給された方
船員保険関係 船員保険制度の「障害年金」「遺族年金」などの給付を平成16年8月以降に受給された方
事業主向け助成金 「雇用調整助成金」の支給決定の対象となった休業等期間の初日が平成16年8月から平成23年8月の間であったか、平成26年8月以降であった事業主 等
4.追加給付について
現在受給している方は、3月から6月にかけて改訂後の額で支給されると共に4月~7月(一部例外あり)にかけて過去分が支給される予定となります。また、過去に受給していた方は、準備が整い次第、順次支給される予定となります。
いずれにせよ、対象となる方には「お知らせ」が送付された上で、支給されることになりますが、受給当時に発行された支給決定通知等の書類は、今後役立つ可能性がありますので、大切に保管しておきましょう。
また、厚生労働省では、以下の問合せ専用ダイヤルを設けております。追加給付に関して疑問に思うことがあれば、弊所と合わせてご活用ください。