社会保障を支える世代の意識について
2018年11月01日
本年9月、厚生労働省は『平成28年社会保障を支える世代に関する意識調査』の結果報告書を公表しました。この調査は、社会保障を支える世代の就業・子育て・親への支援に関する状況の実態や、社会保障制度に対する意識を取り纏めるために行われています。本稿では、社会保障制度の当事者がどのような状況にあってどのように考えているのか、報告書を基に概説します。
1.子育ての状況
“子どもに費やす時間”について、「希望する時間」「実際の時間」共に男性は女性に大きく劣後しており、育児負担が女性に偏っていることがわかります。“子育てと育児の両立”についての感じ方では、「苦もなくできている」と回答した割合は男性の方が多いなど、男性の育児への参画意識が女性と比べ希薄であることが伺われます。
“理想の幼児期の子育てと働き方”に関する質問では、「片働きで、一方が主に子育てを行う」という回答が最も多く(39.3%)、上述の事情を裏付けます。ただ、平成22年調査時よりは7.0ポイント低下し、その一方で、「共働きで、子どもを保育所等に預ける」という回答は前回調査時から8.1 ポイント上昇し、今回調査で2番目に多い回答(34.9%)となりました。
“出産・子育ての環境整備の推進で重点を置くべき方策“については、男女共に「児童手当等の経済的支援の充実」「教育費の負担の軽減」という回答が5割を超え、次いで「保育所等の充実」が4割弱となっています。
3.親への支援の状況
“親への手助けや見守りの状況”については、当然、年齢があがるにつれ「手助けや見守りをしている」割合が増え、50~64 歳では32.6%と、40 歳代における13.1%の倍以上となっています。
“手助けや見守りと仕事の両立”では、男女ともに「仕事が忙しくて、十分な手助けや見守りができない」が最高になりました。また、子育てと同様、「苦もなくできている」と回答したのは男性の方が多くなっています。
“理想とする親への介護”については、男女ともに、またいずれの年齢層でも「子ども(家族)が中心に親の介護をし、ホームヘルパー等外部の者も利用する」が最も多くなっています。ただ、50~64 歳の層では「特別養護老人ホーム等の施設に入所させる」が他の年齢層よりも多くなっています。介護を行っている割合が最も多い50~64 歳層でこのような回答結果になったことは、なにやら示唆的です。
4.就業の状況
“理想とする働き方や労働条件”については、「退職金や企業年金が充実している」が男女ともに多くなりました。その他、「定年まで雇用が確保されている」は男性が多く、「定時どおりに帰宅しやすい環境である」は女性が多くなるなど、性差が顕著になった回答もあります。
“希望する就業年齢”については年齢に伴い上昇する傾向がありますが、“希望する老後の働き方”については、「働く日数を減らしたり、時間を短くして働きたい」が最も多くなっています。
5.社会保障制度に対する意識
“将来への不安”では約8割が「公的年金が老後生活に十分であるかどうか」を挙げながら、一方で約5割が“老後の生計を支える手段”として「公的年金」を1番目に頼りにすると回答し、年齢が上がるにつれてその割合も増えます。“今後、充実させるべき社会保障分野”についても、約7割が「老後の所得保障(年金)」と回答し、「高齢者医療や介護」(約5割)や「子ども・子育て支援」(約4割)を差し置いて最も多くなっています。
“現在の税や社会保険料の負担”では、「生活にはあまり影響しないが負担感がある」が大半ですが、年入200万円未満の層では「生活が苦しくなるほど重い」が上回り、それ以上の収入層でも無視できない回答数があります。