雇用類似の働き方について
2018年08月01日
本年3月、厚生労働省は「雇用類似の働き方に関する検討会」報告書を公表しました。昨今、フリーランスや自営型テレワーク(クラウドソーシング等)といった、企業組織に属さない(雇用契約に依らない)「雇用」と「自営」の中間的な働き方――雇用類似の働き方が増加しています。ここでは、その現状や問題点について、報告書の内容をもとにお伝えいたします。
1.雇用類似の働き方に関する検討会について
この検討会は、平成29年3月に決定した「働き方改革実行計画」において、“拡大の様相を見せる雇用類似の働き方について、順次実態を把握し、保護等の在り方について、法的保護の必要性を含めて中長期的に検討する必要がある”とされたことを踏まえて、平成29年10月から4回に渡り開催されています。
2.雇用類似の働き方に関する現状
報告書は雇用類似の働き方を以下9つの側面から分析しています。
(1) 就業状況等
(2) 契約書の作成、重視する内容等
(3) 契約条件の決め方、交渉等
(4) 契約の相手先の数等
(5) 受注ルート等
(6) 仕事をする時間や場所等
(7) トラブル・仕事上の悩み等
(8) 制度の希望等
(9) クラウドソーシング等
“雇用類似の働き方”と一口に言っても、業界や職種によって仕事の内容は多岐に渡っていますが、調査ではいくつかの傾向を見出しています。例えば、“働き方への満足度は全体的には高い”こと(上述(1)から)や“取引先事業者等との契約条件を文書等で明示していないケースが多くある”こと(同(2)から)、“仕事量等の関係から、複数の発注者と契約ができず、結果的に専属していると考えられるパターンが多くみられる(専属でない働き方をするものも一定数以上いるものと考えられる)”こと(同(4)から)等の実態が、報告書には記載されています。
3.保護等の在り方および今後の検討課題等
現在、雇用契約に依らない働き方は外形的には「自営業者」であり(労働者に該当しないため)、経済法(独占契約法や下請法等)において対応すべきとされています。一方で、実態上労働者に準ずる働き方になっている者については、労働政策上の保護についても検討すべきではないかという考え方も示されています。報告書では、“「雇用類似の働き方の者」の対象や保護の内容をどのように考えるかといった点も並行しつつ、精力的に議論を進めることが求められる”としています。
「雇用類似の働き方の者」については、現時点では多種多様な働き方のほんの一部について把握したに過ぎないため、対象者の要件を同一に定義することは困難としています。ただ、発注者に優位性がある場合が多く、情報や交渉力の格差が生じやすいこと等も踏まえて、以下の課題等が整理された上で、今後保護の可能性を検討すべきとしています。
“契約条件の明示”
“契約内容の決定・変更・終了のルールの明確化、契約の履行確保”
“報酬額の適正化”
“スキルアップやキャリアアップ”
“出産、育児、介護等との両立”
“発注者からのセクシュアルハラスメント等の防止”
“仕事が原因で負傷し又は疾病にかかった場合、仕事が打ち切られた場合等の支援”
“紛争が生じた際の相談窓口”
4.さいごに
報告書の最後では、「雇用類似の働き方の者」については議論の途上にあり、まず全体像や実態の把握について進めるとの方向性が示されるに留まっています。
ただ、添付資料の中では、フリーランスの人数・経済規模や今後の市場拡大の見込みについても示されており(下図参照)、今後の企業の事業運営に大きく寄与する人材となることは否めないでしょう。そして近年、クラウドソーシングやシェアリングエコノミーによる働き方が注目を集めていますが、諸外国においては労働者性を巡って訴訟が起きているようです。
今後とも当事務所では「雇用類似の働き方」についての流れを注視し、情報をお伝えしながら、企業の労務リスクをなくすお手伝いをしてまいります。