内部通報制度の整備について

2018年04月01日

  品質偽装事件など企業のコンプライアンス違反が時々世間を騒がせていることをみても、会社内部の自浄作用や、法令遵守に係る取組強化は企業の重大な課題となっています。そのような中で、本年1月15日、内閣は公益通報に係る規律の在り方や行政の役割等に係る方策を検討するよう、消費者委員会への諮問を行いました。今回は、内部通報制度の概要と企業の対応について、ご案内いたします。

労働者による内部告発の保護
労働法の基本ルールは、会社に労働法令への違反がある場合、労働者はその事実を監督官庁(労働基準監督官など)に申告する権利があり、会社は申告を理由として当該労働者に対して解雇など不利益な取扱いをしてはならないと規定しています(労働基準法第104条、労働安全衛生法第97条など)。
これに加え、平成16年制定の公益通報者保護法では、「労務提供先」が「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律」に違反、または正に違反しようとしている場合、労働者は一定の通報先に通報でき、通報を理由に解雇など不利益な取扱いを受けることから保護される旨が規定されています。
この「労務提供先」は、労働者が労務を提供する事業者のことを指し、直接雇用される会社のほか、派遣先の会社や、請負契約などにおける取引先なども含まれます。また、「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律」には、公益通報者保護法別表で400超の法律が指定されており、労働法令に限らない様々な事項が、広く通報の対象になっています。

(参考)消費者庁『公益通報ハンドブック』抜粋

通報先と事業者の対応について
公益通報者保護法では、以下の3つの通報先が定められており、通報者が法に基づく保護を受けるには通報先毎の要件を満たす必要があります。
①事業者内部(労務提供先および労務提供先があらかじめ定めた者)
②行政機関(通報対象事実について処分・勧告等をする権限がある行政機関)
③その他の外部通報先
公益通報者保護法は、規模や営利、非営利を問わずすべての事業者に適用されるものです。事業者はこの法律を踏まえて、「内部通報制度」の仕組みを整備するとともに、これを適切に運用することが重要です。また、事業者が通報を受けた場合には、その通報に対しどのような措置をとったかなど、当該通報者に対して遅滞なく通知する努力義務を負います(公益通報者保護法第9条)

さいごに
消費者庁のアンケート調査では、約半数の労働者が最初の通報先として勤務先“以外”を選択すると回答しています(下図参照)。その主な理由には、保護制度への不信や、そもそも通報先が社内に無いことなどが挙げられています。内部通報制度は中小規模の会社ほど導入しておらず、導入できない理由の中には「どのような制度なのか分からない」「導入の方法がわからない」というものもあるようです。

しかし、違法行為の発見が遅れると、事業者の処罰や行政措置などによる損失のほかに、拡大した被害の補償コスト、消費者や取引先からの信頼の低下や従業員の士気低下などに波及することもあります。
職場におけるセクシュアルハラスメントの防止のために、雇用管理上必要な措置として相談窓口の設置が挙げられていますが、社内におけるコンプライアンス体制を見直すために、同様に通報窓口の設置について検討してみると良いでしょう。
※消費者庁『公益通報者保護制度の概要と制度の実効性向上に関する検討の経緯』より

 

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