労働災害の発生状況と国の対策について
2017年07月03日
平成29年5月29日、厚生労働省から平成28年の労働災害発生状況が公表されました。本ニュースでは公表の概要をお伝えしながら、近年の国の労災防止対策について取り上げます。
1.公表内容の概要
①死亡災害・死傷災害の発生件数の状況について
労働災害による死亡者数は928人で発生件数は前年を下回り、2年連続で過去最少となりました。一方で、休業4日以上の死傷災害の発生件数は117,910人で、前年を上回っています。
②死亡災害・死傷災害の事故型別の状況について
事故の型別による死亡災害は、高所からの「墜落・転落」が232人(前年比6.5%減)、「交通事故(道路)」が218人(15.3%増)、機械などによる「はさまれ・巻き込まれ」が132人(3.1%増)となっています。
また、死傷災害発生状況は、つまずきなどによる「転倒」が27,152人(前年比4.6%増)、高所からの「墜落・転落」が20,094人(同0.9%増)、腰痛などの「動作の反動・無理な動作」が15,081人(同4.6%増)となりました。
2.国の労働災害防止対策について
厚生労働省では、労働災害を減少させるために5年ごとに「労働災害防止計画」という中期計画を策定して、重点的に取り組む事項を定めています。
現在は、「第12次労働災害防止計画」(平成25~29年)に基づいて対策が推進されています。以下にその内容の概要をご紹介します。
【第12次労働災害防止計画の重点対策】
重点業種対策
第三次産業対策 ○小売業等の実態に即した安全衛生管理体制の構築を検討
○小売業の大規模店舗・多店舗展開企業を重点として労働災害防止意識を向上
○小売業のバックヤードを中心として作業場を安全化
○介護施設における腰痛、転倒防止対策を推進
陸上貨物運送事業対策 ○荷役作業中の労働災害防止を徹底
建設業対策 ○足場、はしご、屋根等様々な場所からの墜落・転落災害対策を推進
○関係請負人まで安全衛生経費が確実に渡るよう発注者に要請
○解体工事での安全の確保、アスベストばく露防止を徹底
製造業対策 ○機械設備の本質安全化(機械そのものを安全にすること)により、機械によるはさまれ・巻き込まれ災害を防止
健康確保・職業性疾病対策
メンタルヘルス対策 ○メンタルヘルス不調を予防するための職場改善手法を検討
○ストレスチェック等の取組を推進
○取り組み方が分からない事業場への支援を充実・強化
○事例集やモデルプログラムの作成により職場復帰支援を促進
過重労働対策 ○健康診断の実施と事後措置などの健康管理を徹底
○休日・休暇の付与・取得を促進
○時間外労働の限度基準の遵守を図り、時間外労働削減を推進
化学物質対策 ○化学物質の有害性情報を収集、蓄積、共有する仕組みを構築
○発がん性に着目した化学物質の有害性評価、評価結果を踏まえた規制を加速
○危険有害情報の伝達・提供とリスクアセスメントを促進
腰痛・熱中症対策 ○介護施設、小売業、陸上貨物運送事業を重点に腰痛予防教育
を強化
○介護機器の導入、腰痛健康診断の普及・徹底、腰痛を起こさない移動・移乗介助法の指導などにより腰痛予防手法を普及
○重量物取扱い業務の腰痛予防に資する規制の導入を検討
○熱中症を予防するため夏季の屋外作業について必要な措置の義務づけを検討
受動喫煙防止対策 ○受動喫煙の健康への有害性に関する教育啓発の実施
○事業者に対する効果的な支援の実施
○職場での禁煙・空間分煙・その他の措置を徹底
現在の防止計画は最終年度となっていますが、問題が払拭されていないことも多いことからも、来年度からの防止計画も同内容のことが踏襲されることでしょう。
言わずもがな、従業員が安心して働くことができる環境が企業の利益にもつながっていきます。労働災害がどのようなところに潜んでいて、どのような対策を取らなければならないのか、国の施策も注視しながら自社に反映させていくことが大切でしょう。