ダイバーシティ経営について

2017年06月01日

平成29年3月、経済産業省は『「ダイバーシティ2.0」検討会報告書』を公表しました。その報告書によれば、“ダイバーシティ経営は稼ぐ力を高める経営戦略を実行するためのものとして、その重要性がさらに高まっている”ということです。本ニュースでは報告書の内容を参考に、企業にとってダイバーシティの意味するところや、労働者にとっての効果などについてお知らせいたします。

1. 「ダイバーシティ」とは
経営におけるダイバーシティは通常、「国籍・性別・年齢・障がいといった(人材の)多様性を尊重する」という意味で使われます。近時ではここに「インクルージョン(受け入れ)」という語句が加わり、「ダイバーシティ&インクルージョン = 排斥や区別を取り払って多様性を受け入れ、誰もが対等に関わり合って組織に参加する」という意味で使われる事もあります。

2. ダイバーシティの実現が求められる理由
先進国が共通して直面している少子高齢化が、人材という資源の恒常的な供給制約を引き起こしています。一方、先進的なITテクノロジーがもたらす「第4次産業革命(人間に代わり、AIが機械を自動制御するようになる産業構造変化)」は、一つのアイデアが産業構造自体を変革してしまう可能性を秘めており、そうしたアイデアを生み出す「知の源泉」としての「人材」が、新たな付加価値の根幹となりつつあります。
この2つの潮流は、優秀な人材を巡った国際的な競争や、人材獲得を目的とした企業買収といった動きを生み出しており、報告書は、“「経営改革」には「人材戦略の変革」が必須になるという認識に立つ必要がある”として警鐘を鳴らしています。
そうした状況下で企業として優秀な人材を獲得していくためには、人材を「日本人」で「適正年齢」の「男性」に限定する必然性はなく、むしろ「多様な人材による人材ポートフォリオを構築すること = ダイバーシティの実現」が求められています。

3. 真に経営に効くダイバーシティ
近年、多くの日本企業においてダイバーシティに積極的に取り組む動きが広がりつつあります。しかし、その動きには「女性活躍」を進めるべきとの政府や社会からの要請に対し、受動的に対応を迫られたという側面も否定できません。 そこには、“経営戦略やビジネスモデルと紐付けてダイバーシティの意義を捉えることなく、形式的・表面的な対応に終始するという状況に陥るリスクが存在している”可能性があります。
真に経営上の効果をもたらすダイバーシティ経営を実現するには、他社で実績を上げた取組を模倣するのではなく、それぞれの組織の実態を勘案しつつ、試行錯誤を繰り返すことで「自社にあった取組」を創り上げていくことが重要になります。

4. さいごに(多様な正社員のあり方と、労働者のメリット)
一般的に正社員は、①労働契約の期間の定めがない②所定労働時間がフルタイムである③直接雇用である者をいいます。しかし、今後ダイバーシティの重要性が増していくにしたがって、『多様な正社員』を受け入れる必要が、企業にも労働者にも出てくるでしょう。
厚生労働省のホームページによると、“多様な正社員とは、いわゆる正社員(従来の正社員)と比べ、配置転換や転勤、仕事内容や勤務時間などの範囲が限定されている正社員”をいいます。
多様な正社員の導入・運用は、労働者にとって以下のようなメリットがあると考えられています。
☐ 育児・介護等の事情により転勤やフルタイム勤務が困難な場合や地元に定着した就業を希望する場合でも、就業の継続、能力の発揮が可能となる(ワーク・ライフ・バランスの実現)。
☐ 非正規雇用から多様な正社員に転換したことで、雇用が安定し、処遇も改善し、自身の能力を発揮することが可能となり、モチベーション高く働くことができる
☐ 安定した雇用のもとで、中長期的なキャリア形成を見据えたスキルアップが可能になる。また特定の職務のスペシャリストとしてキャリアアップも可能となる

経済産業省の報告書は、企業が経営上の必要からダイバーシティを実現していくことを想定していますが、上述のとおり、多様な働き方の実現は労働者側にも大きな利益をもたらします。
経営者が強引に実現するのではなく、労使双方が納得と合意をしながら組織の改編に参加していくことこそが、ダイバーシティ実現への近道なのではないでしょうか。この問題について、多くの企業で活発な議論が持たれることを強く願います。

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