360度評価とダイバーシティ&インクルージョン
2024年09月12日
360度評価とは
上司が部下のマネジメントを行い、かつ、部下に対する評価を行うことは垂直的評価と呼ばれています。
従来の垂直的組織に沿って、評価者は上司であり、被評価者は部下と役割が固定化していました。
しかし、組織が健全でないときには、その評価が恣意的に低く下げられていたり、上司と部下の相性の悪さが過度に影響していたりすることも懸念されます。
そこで、上司だけでなく、同僚や部下も評価者に加えられ、評価者の立場が広げられました。
これを垂直的評価に対し、水平的評価と呼びます。
そして、垂直的評価と水平的評価、さらには自己評価を含め、多面的に評価される方法を360度評価法と言います。
360度評価法には、垂直的評価に比べて評価の客観性を担保できることができます。
また、上司が気が付かなかった部下の能力に気づいたりすることができます。
1988年のHarris&Schaubroeckの調査によれば、上司からの評価、同僚からの評価、そして自己評価の差異についてメタ分析したところ、上司からと同僚からの評価は概ね一致するところが見られたのですが、上司からの評価と自己評価の差異は大きいことが明らかになりました。
このように、評価者による立場の違いの影響が小さいため、360度評価は一定の安定感があり、信頼度もあるといえるでしょう。
それと同時に、自己評価との違いを認識することができ、人材育成のツールとして用いるのは有効であると言えます。
360度評価を使って評価者の目を養いましょう
具体的な評価方法としては、従業員に必要なスキルをあらかじめカテゴライズしたコンピテンシーというものに対し、評点あるいはランクをつけることが多いと思われます。
様々な立場の評価者がいることは、様々な視点、場面のなかにおける対象者の言動・成果物が評価されることを意味します。
そして、コンピテンシーの有意味感は評価者によって程度が変わります。
従業員の見方が多様なことが、様々な意見を知る機会になる反面、被評価者の評価が真正の評価とは言えないかもしれません。
なぜなら、コンピテンシーの理解が不足している従業員にとって、他者を評価することは難しいからです。
360度評価法を導入するためには、会社の評価制度の根底にある会社のビジョン(理想像)、ミッション(達成したいこと)、クレド(価値観)の理解が必要不可欠だと言えます。
ダイバーシティ&インクルージョンのために360度評価法を活用しましょう
会社のビジョン、ミッション、クレドに対する理解を深めることが大切とはなりますが、従業員の文化・慣例のすべてが良いものとは必ずしも言えません。
似たような環境で同じような価値観をもっている人がマジョリティとなる傾向があります。
会社の求めるスキルとは異なる多様なポテンシャルが評価されず、従業員が会社との間にミスマッチを感じる場合もあるのです。
評価者にとっても被評価者にとっても評価制度が有用となるためには、評価制度の運用に参画できている実感が必要です。
従業員全員が評価制度に携わるきっかけとして、360度評価を採り入れることは有効かもしれません。
評価制度は、昇給昇格、給与に関連するため、賃金制度と合わせて見直す必要があります。
当社では、賃金規程や評価制度の制度設計に携わった実績があります。ご検討の際には、ぜひ当社までご相談ください。