2025年4月から改正育児・介護休業法が施行されます

2024年07月22日

○改正育児・介護休業法とは

育児・介護休業法は、仕事と両立して育児・介護に従事できるよう、柔軟な働き方を実現するために見直されました。

改正育児・介護休業法の施行日は、2025年4月1日です。

主な内容としては、以下のとおりです。

 

(1)子の看護等休暇(旧称:子の看護休暇)の延長と取得事由の拡大

現行の1年あたり5日まで休暇を取得できる(2子の場合は、10日まで)制度自体は変更されないが、取得要件が延長・拡大される。

まず、「子が小学校就業前まで」から「子が小学校3年生を修了するまで」とされました。

次に、「病気・けが」「予防接種・健康診断」に加え、「感染症に伴う学級閉鎖等」「入園式(入学式)、卒園式」が取得事由に含まれることとなりました。

厚生労働省(以下、厚労省)は、子の看護休暇制度が敷かれているにもかかわらず、無給の場合が多いため、実際には、年次有給休暇を活用していることを課題に挙げていました。

したがって、より実態に即した制度に改善したものと思われます。

ただし、取得事由については、申請の内容が当該制度の利用に該当するかどうかの判断基準が不明確である点には留意する必要がありそうです。

2025年4月からはじまります 子の看護等休暇について

(2)所定外労働の制限の延長

現行制度では、子が3歳になるまでの場合、申請すれば所定外労働が免除されるが、免除年限が「子が小学校就業前まで」延長されました。

法改正にあたり、厚労省主催の審議会「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」では、多様な働き方を支援する複数の企業の取り組みが参考資料として取り上げられました。

家計を支えるためにも、育児中でもフルタイムで働きたいという希望も少なからずあり、その代わり、残業時間は削減して育児時間を確保するという労働者支える必要性が共有されており、そうした論点が法改正に反映されたものと考えられます。

(3)介護離職防止のための両立支援制度の強化

今回の法改正では、育児分野だけでなく、介護分野の法改正も実施されました。

その内容の詳細は、今後の省令をまつ必要がありますが、介護休業・休暇制度の活用を促すよう、制度の周知を強化することが定められました。

介護は、ケガや病気により、突然介護を要する状況に遭遇し、仕事と介護の両立ができるかどうかという工夫を講じる前に、介護離職を選択する労働者が多いのではないでしょうか。

ケアマネジャーや地域の施設を利用すること、同時に、会社が社員の両立支援に積極的に関わることが求められているといえます。

介護離職を防止するための相談窓口の設置については、当社でも担うことができますので、一度ご相談いただければと思います。

(4)子の看護休暇、介護休暇における除外労働者として「勤続年数6か月未満の社員」を要件から外す

労使協定の締結により、子の看護休暇、介護休暇の除外労働者として「勤務年数6か月未満の社員」が挙げられていましたが、法改正により削除されました。

したがって、除外できる労働者は「週の所定労働日数が2日以下の社員」のみとなります。

(5)3歳~小学校就業前の子を養育する社員に対し、テレワークや短時間勤務など働き続けられる環境を用意する(義務規定)

これまでにも、柔軟な働き方として育児短時間勤務制度(6時間勤務)が設けられていましたが、前述した審議会では、労働時間だけではなく、出勤退勤の時間帯を柔軟に調整できるフレックスタイム制や、通勤時間や体力の消耗を抑えるテレワークの活用なども提唱されました。

その結果、会社は「柔軟な働き方を実現するための措置」を講ずることが義務づけられ、社員はその措置から選択できるよう周知・本人の意向の確認が必要な措置となりました。

「柔軟な働き方を実現するための措置」とは、始業時刻等の変更・テレワーク等・保育施設の設置運営等・新たな休暇の付与・短時間勤務制度が想定されています。

詳細は、厚生労働省サイト「育児・介護休業法について」

 

○法改正の意義と課題

全世代型社会保障構築会議の基本理念は、①将来世代の安心を保証する、②能力に応じて全世代が支えあう、③個人の幸福とともに、社会全体を幸福にする、④制度を支える人材やサービス提供体制を重視する、⑤社会保障のDXに積極的に取り組むというものであり、その視点が時間軸、地域軸でした。

この観点は、育児・介護休業法にも採り入れられているといえるでしょう。

例えば、育児参加に対する積極性は、現代の30~40代は男女差が少ないことが調査で明らかになりました。

しかし、現実には、男性の長時間労働に応じて、女性が短時間勤務へ形態を変更しており、未だに家庭内の育児の主体は女性であるという指摘がありました。

これに対し、長時間労働抑制のための工夫をフレックス制やリモートワークの活用によって、解消することが制度化されました。

また、地域包括支援センターや保育所のニーズの高まり、各施設が地域の拠点として役割を担うことが改めて強調されました。

一方、「小1の壁」の解消や介護体制を整えるまでの支援といった、実際のニーズに制度が合致しているのかは、今後の検証によって明らかになるものと思われます。

 

○仕事と育児・介護の両立にむけて

JMAR「労働力調査 結果の概要」(調査期間;2022年12月~2023年5月)は、2022年の法改正の認知度について調査しています。

その結果、出生時育児休業制度(産後パパ育休)の認知度は、男性で35.7%、女性で39.0%、育児休業の分割取得の認知度は、男性で34.0%、女性で47.1%。、育児休業取得状況の公表が義務化されたことについて認知しているのは、男性は27.8%、女性は31.7%でした(回答者はいずれも正社員)。

調査結果より、法改正対応は、社内規定の見直しだけではなく、社員にしっかりと周知する必要があることがわかります。

この度の法改正も規定の追記と削減を要する複雑な作業になることが予想されます。

来年4月に向けて、当社では、育児・介護休業法の改正に応じた就業規則の作成をお手伝いさせていただきます。

また、実際の制度運用に関するご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

 

 

▲ページのトップに戻る