就職氷河期世代の現況と支援施策

2019年11月01日

 厚生労働省は、令和2年度の就職氷河期支援施策関連の概算要求状況と、既に運用改善等により実行に移している施策を取りまとめて公表しました。今回は、就職氷河期世代の現況と来年度に予定されている政府の施策を見てみましょう。

1.就職氷河期世代とは
概ね、1993年から2004年に学校卒業期を迎えた世代を指します。雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代であり、希望する就職ができず、現在も不本意ながら不安定な仕事に就いている、無業の状態にあるなど、様々な課題に直面している者が多いといわれています。
その中心層の35歳~44歳において、「正規雇用を希望していながら現在は非正規雇用で働いている方」は約50万人で、同世代の人口全体と比して3.0%を占めています。また、「非労働力人口のうち、家事も通学もしていない方(就業を希望しながら、様々な事情により求職活動をしていない長期無業者を含む)」は約40万人で、同世代の人口全体と比して2.4%を占めています。

2.就職氷河期世代支援の必要性
これまでのフリーター・ニート等を対象とした再チャレンジ施策や経済環境の変化等により、就職氷河期世代のフリーター等の数は、10年前と比べ約36万人減少しましたが、無業者数は概ね横ばいの状況です。
このような“取り残された人々”は、能力開発機会が少なく企業に評価される職務経歴も積めていないため、安定した職業に就けず、収入が低い、将来のセーフティーネットが弱いといった課題に直面しています。政府はこれらの課題に対して、安定した就労への道筋を付けるとともに、生活支援の充実、社会保険適用拡大等によるセーフティーネットの強化といった施策を検討しています。

3.来年度に予定される施策
就職氷河期世代への支援は従前からも行われてきましたが、本稿では、新規の施策や、特に拡充のあった施策について、抜粋してご紹介します。

ハローワークに専門窓口を設置(新規)
ハローワーク内に専門窓口を設置し、キャリアコンサルティング、生活設計面の相談、職業訓練のアドバイス、求人開拓等、それぞれの専門担当者がチームを結成し就職から職場定着まで一貫した支援を実施する。

民間事業者のノウハウを活かした不安定就労者の就職支援(新規)
就職氷河期世代の不安定就労者の多い都道府県において、民間事業者に対し、①不安定就労者に対して、創意工夫を活かして、2ヶ月程度の教育訓練、職場実習等を実施する場合に、その訓練等にかかる費用(10万円)を支給、②訓練等を経て安定就職し、一定期間定着した場合、成果に連動した委託費(50万円)を支給。また、同事業で実施される教育訓練、職場実習等については、職業訓練受講給付金の給付対象とする。

特定求職者雇用開発助成金の拡充
現行の安定雇用実現コースを改称し『就職氷河期世代安定雇用実現コース(仮称)』とする。対象年齢要件等を見直した上で、失業中の方のみならず、非正規雇用労働者も支援対象となるよう制度を拡充する。

4.さいごに
政府は、一億総活躍社会として「若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、みんなが包摂され活躍できる社会」を目指しています。そして、様々な特性を持った方々が、それぞれの強みを出し合う多様性こそが、今後企業が発展していくための重要な要素としています。それは、就職氷河期世代も含めて考えていくべきでしょう。当世代の中途採用枠を拡大する企業も出てきています。人材不足が慢性化している近年、一つの対策として検討してみるのも良いかもしれません。

▲ページのトップに戻る