18歳成人に伴う労務管理への影響について

2018年05月01日

成年年齢を18歳に引下げる民法改正案が衆議院に提出されています。これが可決・成立すれば、現在未成年である18~19歳の約200万人が『成人』となります。少し気の早い話ですが、未成年者就労に関する基本ルールと、成年年齢引下げによる影響について、確認してみましょう。

労働法令による未成年者“など”の保護
労使関係の基本ルールを定める労働基準法では、民法上の未成年者のほか、満18歳未満の者を「年少者」、満15歳に到達した年度の末日(3/31)が終了するまでの者を「児童」と定義し、下図のように、それぞれに特別の保護を与えています。

(群馬労働局『児童・年少者雇用の際の留意点』抜粋)
(※1)例として、【重量物の取扱い業務】、【著しく高温若しくは低温な場所または異常気圧の場所における業務】、【酒席に侍する業務】など
(※2)満13歳以上の児童については非工業的業種に限り、満13歳未満の児童については映画の製作または演劇の事業に限り、下記①~④の条件を満たした上で使用することができる。
①健康及び福祉に有害でないこと
②労働が軽易であること
③修学時間外に使用すること
④所轄労働基準監督署長の許可を得ること
前述の通り、労働法には民法上の成年の定義とは別に年齢層ごとの若年者の保護規定が存在しています。よって、今回の民法改正で影響を受けるのは、限定的であると言えるでしょう。

未成年者の労働契約締結の保護
労働基準法が民法上の未成年者を保護している規定としては、第58条第2項の労働契約解除権が挙げられます。これは、例え未成年者が法定代理人の同意を得て締結した労働契約であっても、「親権者もしくは後見人または行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向かってこれを解除することができる」と規定するものです。成年年齢の引下げが行われると、同解除権の保護から外れ若年者に不利な労働契約がまかり通ってしまうおそれがある旨が指摘されています。識者による意見のなかには、これに代わる若年者保護の具体的制度を用意すべきであるというものもあり、国会で踏み込んだ議論がなされることが期待されます。

18歳、19歳からの国民年金加入?
成年年齢の引下げの影響は、「成年」などの語句を使用している他の法令におよびます。一方で、年齢を明記して規定している法令については、それぞれ個別に見直しや改定などがなされることになります。例えば国民年金法では、“被用者以外”の国民年金被保険者(第1号被保険者及び第3号被保険者)には、“20歳以上60歳未満”という年齢要件があります。これに対して、平成27年9月に自民党・政務調査会が行った『成年年齢に関する提言』では、国民年金の支払義務を満18歳以上に引下げる旨が言及されており、今後見直しがなされる可能性があります。 但し、厚生年金の加入者となる“被用者”(≒国民年金の第2号被保険者)については、現行制度にそもそも下限の年齢要件は無く、成年年齢引下げによる影響はないと考えられます。


さいごに
これまで見てきたように、社会保険や労働保険関係の法令などは、民法上の未成年とは別の年齢要件で規定されていることが多く、今回の民法改正案が成立し施行されたとしても、会社の人事労務に与える影響は殆どないでしょう。しかし、将来にわたって人口減と高齢化が進んで行くとされる我が国において、若年者の社会参画は大きな意義を持ちます。また、今後も人手不足や採用難が続いて行けば、今まで未成年者を含め若年者を採用していこなかった会社でも、方針変更を余儀なくされるかもしれません。
新たに若年者等を採用する会社側には、法律上では大人でも情緒や能力の面で発展途上にあると考えられる“新しい成人”に業務指導・教育を行っていく立場として、彼らの価値観を踏まえつつ、コミュニケーションをより密に取っていくなど、一層のきめ細かい対応が求められるでしょう。

▲ページのトップに戻る