熱中症の発生状況と対策について
2017年09月01日
今年も暑い日が続いています。熱中症で搬送された人数は、平成29年5月から7月までの累計で3万1756人(消防庁公表・速報値)に登り、3年ぶりに7月までに3万人を超えました。厚生労働省が公表した、平成28年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によれば、近年の熱中症による死傷者は毎年4~5百人台で高止まりの状態にあります。
今回は、近年の熱中症による死傷者推移や熱中症の症状などを取り上げながら、防止のための対策について取り上げます。
1.熱中症の発生状況
前述のとおり、職場における熱中症による死傷者は年間400名以上発生しています。業種別にみますと、建設業が最も多く、製造業・運送業と続きます。
意外ですが商業での死傷者数も多く、平成28年は全体の約8.4%を占めています。
■熱中症による死傷者数の業種別の状況(人)
※「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」より
2.そもそも熱中症とは?
熱中症とは、“高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称”です。熱中症になると、重症度に応じて下図のような症状が現れます。
■熱中症の分類と症状
Ⅰ度 めまい・失神…「立ちくらみ」のこと。「熱失神」と呼ぶこともあります。
筋肉痛・筋肉の硬直…筋肉の「こむら返り」のこと。「熱痙攣」と呼ぶこともあります。
大量の発汗
Ⅱ度 頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感…体がぐったりする、力が入らない、など。従来「熱疲労」と言われていた状態です。
Ⅲ度 意識障害・痙攣・手足の運動障害…呼びかけや刺激への反応がおかしい、ガクガクと引きつけがある、真直ぐに歩けない、など。
高体温…体に触ると熱いという感触があります。従来「熱射病」などと言われていたものが相当します。
※厚生労働省の資料から抜粋
3.企業がとるべき対策
企業には従業員の身体・生命の安全を確保しつつ労働させるため必要な配慮を行う義務(=安全配慮義務)があるので、適切な処置を行わず熱中症を発症させてしまった場合、損害賠償責任を問われる可能性もあります。そのため、熱中症を発症させない事前の準備をしっかり行っておく必要があります。
厚生労働省では、現在『STOP!熱中症 クールワークキャンペーン』と題して、以下の熱中症予防対策の徹底を促しています。
☐ ✓店個々の労働者に水分・塩分の摂取を呼びかける
☐ ✓事業場として、予防管理者の選任などの管理体制を確立する
☐ ✓WBGT値(※)を測定し、それに基づき以下のような対策を講じる
・熱に慣れ、当該環境に適応させるために計画的に設ける期間の確保
・作業場所のWBGT値の低減
・休憩時間の確保
・熱中症の発症に影響を及ぼす疾病を有する労働者への配慮
※ WBGT値(暑さ指数):気温に加え、湿度、風速、輻射(ふくしゃ)熱を考慮した、身体に影響する暑さの環境における熱ストレスの評価を行う指数。
9月になれば気温のピークは過ぎますが、それでも日中の気温は高く、油断はできません。また、9月は台風などの影響で湿度が上がりやすく、7・8月とは別の意味で熱中症に注意すべき季節といえます。さらに9月は日中と夜間との気温差が激しく、体温調整が難しいため体調を崩しやすい時期でもあります。個々の従業員が、油断しがちな時期だからこそ、企業として十分な注意喚起と予防対策を続けるべきでしょう。
外的環境は生産効率などにも大きく影響するものです。今回は暑さについて取り上げましたが、今一度、自社の労働環境は従業員の生産性を損なうものではないか、確認するきっかけとしても捉えていただければ幸いです。