近時の雇用情勢について
2017年08月01日
5月30日に、平成29年4月分の有効求人倍率と完全失業率が公表されました。いずれも好調に推移しており、塩崎厚生労働大臣も会見において「雇用情勢は着実に改善が進んでいるという認識には変わりがない」と述べています。
本ニュースでは近時の雇用情勢を概説し、企業が注意すべきポイントについてお伝えします。
●公表内容の概要
厚生労働省発表の一般職業紹介状況によると、4月の有効求人倍率(季節調整値)は前月より0.3ポイント上昇し、1.48倍で、約43年ぶりの高い水準となりました。これはバブル期の最高値である1.46倍を超え、昭和49年7月以来43年2ヵ月ぶりの高い水準とのことで話題になりました。5月の有効求人倍率も微増しており、今後も高い水準で推移していくことが見込まれます。
また、同日総務省が公表した労働力調査によると、4月の完全失業率(季節調整値)は2.8%となり、本年2月以降は同じ水準を保っています。これも2月の時点で、平成6年6月以来22年8ヵ月ぶりの低い水準になります。
ここ一年の動向(※下表参照)を見ると、冒頭にお伝えした厚生労働大臣の言葉のとおり、有効求人倍率・完全失業率ともに雇用情勢は改善基調であることを示しています。このことから今後も、労働市場はさらなる売手市場化が進むことが推察されます。
【有効求人倍率(右軸、折れ線グラフ)と完全失業率(左軸、棒グラフ)の推移】
(総務省統計局HPから抜粋)
●人材を確保していくために
有効求人倍率にはパートタイマーも含まれていますが、パートタイマーを除外した正社員有効求人倍率(季節調整値)でも前月を0.03ポイント上回る0.97倍となり、「求職者1人に対して1社の正社員求人がある」という状態が間近に迫っています。そのような状況下においては、人材の確保はどこの企業にとっても、これからの経営に関係する大きな課題となってくるでしょう。
下表は平成27年を基準(= 100)とした実質賃金指数の推移です。過去10年間、賃金は概ね低下してきましたが、足元では改善の傾向がみられます。今後も労働市場がひっ迫していけば、人材確保を目的として賃金が上昇していく可能性は十分にあります。
【実質賃金指数(現金給与総額。左軸、棒グラフ)と前年同月比(右軸、折れ線グラフ)の推移】
(総務省統計局HPから抜粋)
一般に有効求人倍率が1倍を超えてくると、従業員がより良い待遇を求めて他企業へ転職する動きが加速すると言われています。これまで特に不満や反感をあらわにしていなかった従業員も、より自身の望む待遇が目に写れば、翻意をするかもしれません。
賃金面以外にも、労働環境や人間関係など、働く動機づけになる要素は他にも多々あります。従業員が働きやすい環境を整えていくことが、今後の従業員の採用や定着に重要になってくるでしょう。