高齢者が健康に活躍するために

2022年08月08日

5月下旬、厚生労働省により取りまとめられた「令和3年の労働災害発生状況」が公表されました。
これによると、令和3年1月から12月までの労働災害による死亡者数は867人で4年ぶりに増加しました。また、休業4日以上の死傷者数(以下「死傷者数」という)は149,918人と平成10年以降で最多となっていますが、そのうち60歳以上の高齢者の占める割合が25.7%となっており、全体の4分の1を占めていることが分かります。
本稿では、今後一層進むことが予想される高齢者の就労について、今一度前述資料の労働災害発生状況を概観するとともに、「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」の一部をご案内いたします。

●エイジフレンドリーガイドライン
エイジフレンドリーガイドラインは、厚生労働省が、高齢者を現に使用している事業場やこれから使用する予定の事業場で、事業者と労働者に求められる労働災害防止対策への取組を具体的に示したものです。
そのうち、事業者に求められる事項として以下の5つが提示されています。

1 安全衛生管理体制の確立
❶ 経営トップによる方針表明と体制整備

❷ 危険源の特定などのリスクアセスメントの実施

2 職場環境の改善
❶ 身体機能の低下を補う設備・装置の導入

❷ 高年齢労働者の特性を考慮した作業管理

3 高年齢者の健康や体力の状況の把握
❶ 健康状況の把握

❷ 体力の状況の把握

❸ 健康や体力の状況に関する情報の取扱い

4 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
❶ 個々の高年齢労働者の健康や体力の状況を踏まえた措置

❷ 高年齢労働者の状況に応じた業務の提供

❸ 心身両面にわたる健康保持増進措置

5 安全衛生教育
❶ 高年齢労働者に対する教育

❷ 管理監督者などに対する教育

 

◇高年齢者の労働災害の特徴

労働災害発生率は、若年層に比べ高年齢層で相対的に高くなっており、なかでも、転倒災害・転落災害の発生率は若年層に比べ高い傾向にあります。
転倒は、高年齢になるほど労働災害発生率は上昇し、とりわけ女性の場合、60代後半は20代の約16倍まで上昇します。
また堕落・転落に関して、男性の場合、60代後半は20代の約4倍まで上昇します

厚生労働省では、高齢者が安心して働けるように就業環境等を整備する中小企業事業者に対して「身体能力の低下を補う設備・装置の導入に係る費用」や「働く高齢者の健康や体力の状況の把握等」などの対策に要した費用を補助する「エイジフレンドリー補助金」制度も実施しています。
今後、社会全体の高齢化が進む中で、労働者の高齢化も避けられないことでしょう。未来を見据えて、高齢者が活躍できる環境整備に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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