職場のハラスメントの実態

2021年07月12日

改正労働総合施策推進法により、2022年4月1日から中小事業主に対してもパワーハラスメントの雇用管理上の措置が義務化されます。

事業主が雇用管理上講ずべき措置

・事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

・相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

・職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

・併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止など)

大企業への義務化から1年経ち、中小企業への対象拡大が迫る中で、求められる対応に関する課題が浮き彫りとなっています。

 

ハラスメントの実態を示す報告書

厚生労働省は4月30日、「職場のハラスメントに関する実態調査」を取りまとめた報告書を公表しました。この実態調査は、厚生労働省委託事業者が全国の企業と労働者等を対象に、昨年10月に実施したものです。その一部を、以下に抜粋してお伝えします。

①ハラスメントに関する雇用管理上の措置の実施状況(企業調査)

回答企業の約8割が、パワハラ、セクハラおよび妊娠・出産・育児休業等・介護休業等ハラスメントに対する雇用管理上の措置として、「ハラスメントの内容、ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化と周知・啓発」および「相談窓口の設置と周知」を実施していると回答した。

一方、「相談窓口担当者が相談内容や状況に応じて適切に対応できるようにするための対応」の割合は全てのハラスメントにおいて約4割程度であった。

②ハラスメントの予防・解決のための取組を進める上での課題(企業調査)

取組を進める上での課題としては、「ハラスメントかどうかの判断が難しい」(65.5%)の割合が最も高く、次いで「発生状況を把握することが困難」(31.8%)が高かった。

③ハラスメントを受けた後の行動(労働者等調査)

ハラスメントを受けた後の行動として、パワハラ、セクハラでは「何もしなかった」の割合が最も高かった(それぞれ35.9%、39.8%)。一方、顧客等からの著しい迷惑行為では、「社内の上司に相談した」の割合が最も高く、次いで「社内の同僚に相談した」が高かった。

また、パワハラ、セクハラ、顧客等からの著しい迷惑行為のいずれにおいても、勤務先が各種ハラスメントの予防・解決に向けた取組をしているという評価が高いほど「社内の同僚に相談した」等の割合が高く、「何もしなかった」の割合が低かった。

④ハラスメントを知った後の勤務先の対応(労働者等調査)

ハラスメントを知った後の勤務先の対応としては、パワハラでは「特に何もしなかった」(47.1%)、セクハラでは「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」(34.6%)、顧客等からの著しい迷惑行為では、「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」(48.6%)の割合が最も高かった。

 

おわりに

企業調査では、相談窓口を設けている企業は多いものの、その担当者が適切に対応できるためのフォローがなされておらず、そのことからか、ハラスメント対応の入り口であるハラスメントの判断や発生状況把握に苦慮しているという問題が表れています。それが、労働者調査における、「何もしなかった」、「特に何もしなかった」という数値に表れているのではないでしょうか。

逆に企業の予防・解決に向けた取り組みが認知されているほど、相談割合の高さにつながることもデータとして表れています。まずは、企業としての方針を打ち出すこと、相談窓口を設置し機能させることが、被害を顕在化し問題解決つなげていくためにも重要であることがうかがえるかと思います。

中小企業への法施行をきっかけとして、ハラスメントに対する世間的な注目度は、より高まっていくことが予想されます。まずは、社内アンケートなどを実施するなど自社の現状を正しく理解し、企業実態に適った実効性のある対策を積極的に講じていくよう努めましょう。

▲ページのトップに戻る