裁量労働制の現状

2021年11月08日

テレワーク下の労働時間管理の問題で、多様な労働時間制度の導入検討を進めた企業も多いのではないでしょうか。その労働時間制度のひとつとして、裁量労働制について、厚生労働省から実態調査結果が公表されました。本稿では、裁量労働制の制度概要と調査結果の抜粋をご紹介します。

1 裁量労働制の概要
裁量労働制は、時間配分や仕事の進め方を労働者の裁量に委ね、自律的で創造的に働くことを可能とする制度です。本制度には以下の二つの種類があります。

《専門業務型裁量労働制》
法令等により定められた専門業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間を労働したものとみなすことができる制度です。

《企画業務型裁量労働制》
事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて、労働者を制度の対象となる企画、立案、調査および分析などの業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間を労働したものとみなすことができる制度です。
趣旨に則って運用なされれば、労働者の能力が発揮され、またフレキシブルな働き方が実現できる労使ともに良い効果を発揮する制度です。しかしながら、趣旨に適った対象業務の範囲や、労働者の裁量と健康を確保する方策等について、課題が挙げられています。

2 実態調査の結果
「裁量労働制の実態調査」により、現行の専門業務型および企画業務型それぞれの裁量労働制の適用・運用実態が明らかとなりました。以下に抜粋してお伝えします。

《労働時間》
裁量労働制が適用されている労働者の1日の平均実労働時間数は8時間44分となり、適用されていない労働者の1日の平均実労働時間8時間25分と比較して、およそ20分長くなっています。また、労働時間の分布を見るに1日の当たり平均の実労働時間は裁量労働制が適用されている労働者の方が長時間労働となっている傾向にあることがうかがえます。

裁量労働制の適用に対する満足度
専門業務型、企画業務型共に「満足している」という回答が80%を超えるなど、制度への満足度は高くなっています。ただ、労働者の働き方に対する認識を見るに、裁量労働制非適用労働者より「労働時間が長い」という認識が強く、「みなし労働時間の設定が不適切である」という認識も一定存在しています。

■裁量労働制の適用に対する満足度

(厚生労働省「裁量労働制実態調査の結果について(概要)」)

3 おわりに
この裁量労働制実態調査に引き続き、厚生労働省は「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催し、調査結果に基づく裁量労働制の在り方の検討と、その他の労働時間制度についての見直しを開始しました。本検討会のみならず、国は今後も時間や場所に拘られない働き方について、在り方を見直しながら、推進していくことでしょう。法整備の状況も注視しながら、自社の現状を考慮して、労使がよりメリットを創出できる労働時間制度を模索していくことが、企業の発展のためにも重要となるでしょう。

 

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