お店に立つのが怖い…カスハラの実態

2024年06月06日

●執拗に迷惑行為を繰り返す…悪質なクレーマー

提供する商品やサービスに欠陥や落ち度は認められないのに、顧客から不当な要求を求められる。

多くの方が、このような経験があるのではないでしょうか。

毎日店頭に立つのに、また同じお客様からクレームをつけられたらどうしよう。

対応がわからないけど、相談していいのかわからない。

悪質なクレーム対応も業務の一環。だから誰も助けてくれない。

でも、クレーマーに言われたことが耳に残って眠れない。

ある日、突然耐えられなくなって、自己都合による退職を選択してしまうケースも見られます。

 

●カスハラとは

最近、カスタマーハラスメントという言葉が広まりつつあります。

カスタマーハラスメントは次のように言われています。

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの

(カスタマーハラスメント対策企業マニュアル作成事業検討委員会編「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」2022年2月)

カスタマーハラスメントを包括的に指すとき、抽象的な表現にならざるを得ないのは、様々なケースによって被害が生まれているからでしょう。

引用した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」は、上記の表現に注釈を付していて、かみ砕いて要約すると次のようになります。

・(加害対象)「顧客等」とは、実際に商品・サービスを利用した者だけでなく、今後利用する可能性がある潜在的な顧客も含みます。

・(内容)「当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして…社会通念上不相当なもの」とは、顧客等の要求の内容が妥当でないこと。

・(手段)「当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なもの」とは、当該クレーム・言動の手段・態様が妥当でないこと。

・(被害状況)「当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」とは、クレームを受けた従業員が、身体的・精神的苦痛を受け、本来発揮されるべき能力が発揮できなくなった状態にあること。

 

●カスハラの行為の種類

カスハラの種類はどういったものがあるでしょうか。

「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、企業へのヒアリング結果を公表し、次のように分類しました。

▷時間拘束;1時間を超える長時間の拘束・居座り。長時間電話を行う。

▷リピート型;頻繁に来店し、その都度クレームを行う。

▷暴言;店内で大きな声をあげて秩序を乱す。

▷対応者の揚げ足取り;自らの要求を繰り返して、通らない場合は言葉尻を捉える。

▷脅迫;SNSやマスコミへの暴露をほのめかした脅し。

▷権威型;優位な立場にいることを利用した暴言を行う。特別扱いを要求する。

▷SNSへの投稿;従業員の指名を公開して、インターネット上へ投稿する。

▷正当な理由のない過度な要求;言いがかりによる金銭を要求する。スマートフォン等の私物が故障したことに対して金銭を要求する。備品を過度に要求する。

▷コロナ禍に関連するもの;マスク着用、消毒、窓開けに関する強い要望を押し付ける。顧客がマスク着用を拒否する。

▷セクハラ;特定の従業員へのつきまといを行う。従業員へのわいせつ行為や盗撮を行う。

▷その他;事務所への不法侵入を行う。

部下や同僚、従業員が上記のようなハラスメント被害を受けたとき、どのような対応を行うべきでしょうか。

 

●カスハラ対策は会社の急務となっている

厚生労働省は「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」にて、カスタマーハラスメントの被害を受けたと回答した者に対し、その対応を調査しました。

その結果、「上司に引き継いだ」が37.4%、「謝り続けた」が32.1%、「顧客等からの要求等を断った」が29.0%、「複数人の職員で対応した」が21.3%、「何もできなかった」が14.6%、「要求に応じた」が9.5%の割合で回答を得ました。

何もできなかった、顧客等からの迷惑行為を受け入れてしまった人の割合が全体の4分の1にも上ります。

近年では、医療機関や鉄道会社でもカスタマーハラスメント対策を練っており、従業員の被害を最小限に抑えるよう努力しています。

しかし、カスハラの行為の種類は多岐にわたり、実務に役立つマニュアル作りは膨大な作業量になる可能性があります。

労務相談の実績が多い当社では、カスハラ対策マニュアルの作成もお手伝いさせていただきます。お気軽にご相談ください。

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