介護離職防止のための相談窓口を設置しましょう
2024年09月11日
ビジネスケアラーとは
「ビジネスケアラー」という言葉をご存じでしょうか。ビジネスケアラーとは、仕事をしながら介護を行う者を指します。
ヤングケアラーという言葉はご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
家族の介護や家事を過度に担っている子どもを指しますが、実態調査を通じて、子どもとしての権利を擁護するために十分な配慮が必要であるという認識が高まりました。
他方、いまだ潜在的な存在として、明確な実態を把握できていないのがビジネスケアラーの存在です。
経済産業省が、介護政策においてビジネスケアラーという用語を用いています。
同省は、介護離職の防止に関する企業が取り組みを調査し、会社が両立支援を推進するためのガイドラインを策定しています。
2024年3月、同省の公表資料「経済産業省における介護分野の取り組み」によると、現在の勤務先に長期的に働き続けるために、勤務先から支援されていないと回答したビジネスケアラーが約4割にも上ることが明らかとなりました。
法制度や会社独自の制度においても不十分と感じる従業員が多く、両立に関する相談をする前に離職する介護離職者が多くいることが想定されます。
介護両立支援制度の改正
介護休業制度とは、従業員が介護を必要とする状況にあるとき、最大93日まで3回に分けて利用できる休業制度のことです。
介護休業制度及び介護両立支援制度の根拠となっている法律は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下、育児・介護休業法)です。
2024年5月に法改正が行われ、会社は介護両立支援制度に関して、以下の措置を講ずることが義務付けられました。
・対象家族が介護を必要とする状況に至ったことを従業員が申し出た場合、
① 介護休業に関する制度および介護両立支援制度等について個別に知らせること
② 介護休業および介護両立支援制度等について従業員の意向を確認すること
・従業員が40歳に達した日の属する年度その他省令で定める期間の始期に達したとき、
① 介護休業に関する制度について情報提供すること
② 介護両立支援制度等について情報提供すること
③ その他省令で定める事項について情報提供すること
事前に介護制度や介護休業制度を理解し、実際に家族を介護する状況になったとき、従業員も会社も柔軟な働き方に対応する一歩として、相談窓口を設けることが義務付けられました。
上記の法改正は、介護との両立を諦めてしまう前に、介護離職を予防することが狙いと思われます。
ビジネスケアラーのために会社ができること
当社では、以前より介護の離職を予防するための相談窓口の設置を提唱してきました。
詳細は、以下のリンクを参照してください。
一般社団法人 日本経済調査協議会『「介護離職」防止のための社会システム構築への提言~最終報告~企業のへの調査結果から』2020年3月。
上記報告書のなかで、当社は介護に直面した従業員の状況について、経営層が把握していないことが課題であると指摘しました。
今後、実態調査によって法制度がさらに整備されることが期待されますが、従業員と経営層の関係に着目したとき、それだけでは不十分と思われます。
もし相談窓口を設置したとしても、従業員が相談したいと思える環境でなければ、上記の制度は両立支援に結びつかないからです。
従業員の「会社に迷惑をかけるのではないか」という不安感を取り除き、復帰後のキャリアを支援するという会社の姿勢が重要です。
近年、育児・介護休業法関連の制度改正が頻繁に行われ、人事・総務部門の繁忙にも影響を及ぼします。
当社では、この度の法改正の実務対応を踏まえ、介護保険制度や介護両立支援に関する相談対応をお引き受けするサービス提供を始めました。
当社は社会保険労務士法人ですので、社会保険手続きも併せて包括的なサービスをご利用いただけます。
詳細は、当社までお問い合わせください。