女性の活躍に関する「情報公表」の効果とはー経営労務を強化する「社労士診断認証制度」も併せて活用しましょうー

2024年08月08日

女性活躍推進法における女性の活躍に関する「情報公表」の概要

2024年5月、厚生労働省は「『女性活躍に関する調査』報告書」を公表しました。

2019年の改正「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以下、女性活躍推進法)に基づき、厚生労働省は社員数101人以上の会社に対し、自社の女性活躍に関する情報を公表することを義務付けました。

同法第2条には基本原則が記されています。

(基本原則)

第二条 女性の職業生活における活躍の推進は、職業生活における活躍に係る男女間の格差の実情を踏まえ、自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性に対する採用、教育訓練、昇進、職種及び雇用形態の変更その他の職業生活に関する機会の積極的な提供及びその活用を通じ、かつ、性別による固定的な役割分担等を反映した職場における慣行が女性の職業生活における活躍に対して及ぼす影響に配慮して、その個性と能力が十分に発揮できるようにすることを旨として、行われなければならない。

2 女性の職業生活における活躍の推進は、職業生活を営む女性が結婚、妊娠、出産、育児、介護その他の家庭生活に関する事由によるやむを得ず退職することが多いことその他の家庭生活に関する事由が職業生活に与える影響を踏まえ、家族を構成する男女が、男女の別を問わず、相互の協力と社会の支援の下に、育児、介護その他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を円滑に果たしつつ職業生活における活動を行うために必要な環境の整備等により、男女の職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立が可能となることを旨として、行われなければならない。

3 女性の職業生活における活躍の推進に当たっては、女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきものであることに留意されなければならない。

上記では、職業生活における活躍、育児・介護との両立、そして、その両立の選択は本人の意思が尊重されることを基本原則としています。

同法の基本原則を踏まえ、会社側の責務として、女性の活躍のための職場環境整備のための一般事業主行動計画の策定と女性の活躍に関する数値の調査と分析及び公表が義務付けられました。

公表する項目は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活との両立」の区分に分かれています。

なお、2022年改正法により、社員数301人以上の会社は「男女の賃金の差」を公表することが義務付けられました。

「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」(項目1~8のうちから1つ以上選択、かつ項目9必須※社員数300人以下の会社は任意の項目1つ以上を選択)

  1. 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  2. 男女別の採用における競争倍率
  3. 労働者に占める女性労働者の割合
  4. 係長級にある者に占める女性労働者の割合
  5. 管理職に占める女性労働者の割合
  6. 役員に占める女性の割合
  7. 男女別の職種または雇用形態の転換実績
  8. 男女別の再雇用または中途採用の実績
  9. 男女の賃金の差異

「職業生活と家庭生活との両立」(項目1~7のうちから1つ以上選択)

  1. 男女の平均継続勤務年数の差異
  2. 10事業年度及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
  3. 男女別の育児休業取得率
  4. 労働者1月当たりの平均残業時間
  5. 雇用管理区分ごとの労働者の1月当たりの平均残業時間
  6. 有給休暇取得率
  7. 雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

以上の数値を調査し、その結果を分析します。

例えば、男女の賃金の差について「男性社員の平均賃金が低い結果であるが、継続雇用契約を締結している男性社員が多いため」といった分析が挙げられます。

さらに調査した数値を「女性の活躍推進企業データベース」に公表することが必要です。

調査・分析は大変ではありますが、数値ごとに課題を浮き彫りにし、人事労務管理に生かしていくことは、効果的に思われます。

 

女性の活躍に関する「情報公表」の副次的効果

厚生労働省が公表した「『女性活躍に関する調査』報告書」では、会社の取組みによる影響・効果を検討しています。

社員数300人以上の会社では、公表項目数が多いほど「女性の応募が多くなった」「女性の採用が多くなった」「女性本人が新しい仕事にチャレンジするようになった」「女性本人が昇進を希望するようになった」「女性の結婚・出産退職者が減った」ことが明らかになり、特に「育児・介護をしながら働く女性管理職が出てきた・増えた」という傾向が顕著となりました。

またこの取組みにおいて、「女性活躍に向けた社内の意思統一ができた」「職場が活性化した」「採用で人材が集まるようになった」という副次的効果が見られたといいます。

社員数100人以上300人未満の会社では、公表項目数が多いほど「女性の応募が多くなった」「女性の採用が多くなった」「育児・介護をしながら働く女性管理職が出てきた・増えた」ことが明らかになりました。

またこの取組みにおいて、社員数300人以上の会社と同様の効果が得られ、さらに、公表項目数が多いほど「仕事の進め方が効率的になった」という関連性も見出されました。

この報告書では、情報公表項目数が多いほど、女性社員だけでなく、会社全体にもプラスの効果をもたらしていることがわかりました。

今後も、継続的に調査・分析及び公表を通じて、職場環境が改善され、優秀な人材を集めたり、人材定着に効果を発揮することと思われます。

「『女性活躍に関する調査』報告書」の掲載サイトはこちら(掲載日2024年5月17日)

「社労士診断認証制度」を活用しましょう

女性活躍推進法に基づく情報の公表は、会社全体の職場環境改善に役立つことが明らかになりましたが、経営労務に関する項目を網羅しているわけではありません。

そこで、おすすめするのが「社労士診断認証制度」というものです。

全国社会保険労務士会連合会が主催する「社労士診断認証制度」とは、労働社会保険諸法令の遵守や職場環境の改善に積極的に取組み、会社経営の健全化を進める企業に対し、社会保険労務士が診断・認証する制度です。

診断・認証には3つのランクがあり、「職場環境改善宣言企業」の認定を受けるためには、公開された診断項目を確認し、申請するだけで認証を受けることができます。

「職場環境改善宣言企業」の認証後、「経営労務診断実施企業」「経営労務診断適合企業」にチャレンジすることができます。

こちらは社会保険労務士に診断を委託する必要があります。

この診断を受けると「経営労務診断実施企業」としての認証を受けることができます。

そして、すべての必須項目において適正と診断された場合には「経営労務診断適合企業」として認められることとなります。

実は、一部の調査項目が女性活躍推進法に基づく女性の活躍に関する情報項目と重複するところがあるため、会社にとって取り組みやすい、そして「経営労務診断適合企業」の認証を受ける可能性が高いということが言えます。

また、女性の活躍に関する情報における調査・分析と相乗効果で職場環境に良い影響を及ぼすことが期待できます。

現在、3,334社が「職場環境改善宣言企業」「経営労務診断実施企業」又は「経営労務診断適合企業」の認証を受け、その診断結果の一部について公表しています。

ちなみに「女性の活躍推進企業データベース」にて女性の活躍に関する情報を公開している会社は、34,551社(2024年8月時点)です。

少しでも気になった方は、労務監査分野で実績の多い当社に一度ご相談ください。

「社労士診断認証制度」をきっかけにして、今まで以上に経営労務を強化していきましょう。

「社労士診断認証制度」についてはこちら

 

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