外国人雇用に関するルール
2021年08月09日
労働力不足が深刻化しているなか、外国人の労働力を活用する企業が増えています。厚生労働省が公表した「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」によると、外国人労働者数は1,724,328人で、届出が義務化されて以降、過去最高を更新しました(令和2年10月末時点)
そのような中で先般、大手宅配サービス事業者が、出入国管理法違反(不法就労助長など)の疑いで書類送検されました。これまでも配達員の外国人が不法就労容疑で逮捕・書類送検される例は多数ありましたが、不法就労に関連した容疑で運営会社が書類送検されるケースは初めてのことです。
在留資格の確認
在留資格とは、外国人が日本に滞在するための入管法上の資格を指します。外国人は原則として、在留資格に基づき日本に在留し、活動が認められることになります。その在留資格と日本での就労の可否の関係は、以下の通りとなります。
就労の可否 |
在留資格 |
在留資格に定められた
範囲で就労が認められる 在留資格(18種類) |
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、特定技能、技能実習、特定活動(ワーキングホリデー、 EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士等) |
原則として就労が認められない在留資格(5種類) | 文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在
※「留学」および「家族滞在」の在留資格をもって在留する外国人の方がアルバイト等の就労活動を行う場合には、地方出入国在留管理局で資格外活動の許可を受けることが必要です。 |
就労活動に制限がない在留資格(4種類) | 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 |
実務対応 |
外国人労働者を受け入れる際は、在留カードなどの書類をチェックした上、
(1)当該在留資格が就労可能なものか否か (2)就労可能な場合、認められた活動と業務が合致しているか 以上、2点を確認しましょう。 |
雇用管理
外国人労働者の雇用管理の改善は事業主の努力義務です。外国人労働者が日本で安心して働き、その能力を十分に発揮する環境を確保されるよう、事業主が行うべき事項について、厚生労働省は「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を定めています。
指針の主な内容 |
◆法令の適用について
労働基準法や健康保険法などの労働関係法令および社会保険関係法令は、国籍を問わず外国人にも適用されます。また、国籍による労働条件面での差別的取扱いは禁止されています。 ◆適正な人事管理について 賃金の支払い、労働時間管理、安全衛生の確保等については、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法等に従って適切に対応しましょう。人事管理に当たっては、職場で求められる資質、能力等の社員像の明確化、評価・賃金決定、配置等の運用の透明性・公正性を確保し、環境の整備に努めましょう。 |
外国人雇用状況の届出
すべての事業主に、外国人労働者(特別永住者および在留資格「外交」・「公用」の者を除く)の雇入れまたは離職の際に、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間等について確認し、ハローワークへ届け出ることが義務付けられています。令和2年3月1日以降、在留カード番号の記載も必要になりましたので、所定の事項と併せて確実に確認しましょう。
最後に
不法就労については、不法就労をした外国人だけでなく、不法就労をさせた事業主も不法就労助長罪として3年以下の懲役または300万円以下の罰金など処罰が課せられることになります。そしてこれは、不法就労者であることを知らずに雇用した事業主も処罰の対象とされています。外国人労働者を雇用する際には、確実に在留資格を確認しましょう。
また、企業の採用意欲の高まりに比例して、外国人労働者の確保も難しくなってきています。採用の後の定着も見据えて、経済産業省が策定した「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック」なども参考にしながら、採用から雇用管理までの一連を考えた取り組みを進めると良いでしょう。