労働関係法令違反企業の公表制度について

2017年08月01日

平成29年5月、厚生労働省は労働関係法令違反として各都道府県労働局が公表した企業名を集約し、ホームページで公開しました。この企業名一覧の公表は、昨年12月の「過労死等ゼロ」緊急対策の一環で開始されたもので、同10月から今年3月に違法な残業や賃金未払い、労働安全衛生法違反などで書類送検された合計334件(社数は332社)について、都道府県別に並べられています。今回は、公表制度の概要と公表された企業についての実態調査結果をご案内します。

公表制度により掲載される基準について
①労働基準関係法令違反の疑いで書類送検され、企業名を公表された企業
②都道府県労働局長により企業の経営トップに対する指導が行われ、企業名を公表された企業
(労働基準監督署長の監督指導に関わらず再度違法な長時間労働等が認められた企業、または違法な長時間労働を原因とした過労死を複数の事業場で発生させた等の企業)

掲載される内容
都道府県労働局および厚生労働省のホームページに掲載する内容は、①企業・事業場名称、②所在地、③公表日、④違反法条項、⑤事案概要、⑥その他参考事項、となっています。

掲載時期および掲載期間
①都道府県労働局では、送検事案または局長指導事案を公表後、速やかに局のホームページに掲載されます。
②厚生労働省では、全国の送検事案および局長指導事案をとりまとめ、毎月定期的に厚生労働省のホームページに掲載されます。
③掲載期間は、公表日から概ね1年間で、1年経過後の月末にホームページから削除されることになります。
(公表日から概ね1年以内であっても、掲載を続ける必要がなくなったり、是正や改善が認められる場合は、ホームページから削除されることになっています)

掲載企業の実態調査について
この公表された企業について、東京商工リサーチでは5月に「『労働基準関係法令の違反企業332社』企業実態調査」として調査結果を公表しています。

それによると、「売上高10億円未満の中小・零細企業が164社(同67.2%)と、全体の約7割を占めた。なお、売上高が判明しない企業の多くは個人企業などで、労働基準関係法令の違反企業は中堅以下の小規模企業に集中している実態が浮き彫りとなった」と報告されています。世間を賑わす労働関連のニュースでは、大企業ばかりが取り上げられていますが、公表対象は小規模企業が多くを占めています。

また、「今回社名を公表された332社のうち、倒産企業は16社(負債1千万円未満を含む)、休廃業・解散は判明分で2社、合計18社(構成比5.4%)が含まれ、大半は小・零細企業だった。また、売上高10億円未満の企業が約7割を占め、業績悪化や資金力の乏しさが労働基準関係法令の違反に直接、間接に繋がった可能性も示唆している」と記載があります。公表されたことが直接経営不振に関連するとは限りませんが、従業員の採用と定着や取引先との関係が悪化すれば、事業存続に関わる影響が出てきます。

企業名の公表について
厚生労働省は、労働関係について、ペナルティーとして企業名の公表制度を、逆にインセンティブとして「くるみんマーク認定」「ユースエール認定」などといった認定制度を使って、企業の色分けを進めています。
そして、良い情報にせよ悪い情報にせよ、デジタル社会の発展により、公表された企業名はインターネットで一瞬にして情報が共有されます。労働関係法令違反の公表は、都道府県労働局や厚生労働省のホームページから削除されたとしても、継続的に情報は残り、企業にマイナスに働き続ける恐れもあります。

特に昨今、「働き方改革」の名の元に労働関係の法令は目まぐるしく改正が繰り返されています。継続的に自社の体制を見つめ直しながら、少しでも良い企業になるべく一歩一歩、歩みを進めることが、今後ますます事業継続のために重要となるでしょう。

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