業務上腰痛の発生状況と労災認定

2022年01月10日

1.業務上腰痛の発生状況に関する報告書
腰痛は、4日以上の休業をともなう業務上疾病の約6割を占めており、日本における最大の職業病ともされています。
そこで、独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所では、業務上腰痛に共通する特徴を抽出して腰痛発生を予防することを目的として
「業務上腰痛の発生状況に関する報告書」を取りまとめ公表しました。以下にその一部をご紹介します。
① 業種大分類別の業務上腰痛件数
保健衛生業が3,195件(31.3%)と最も多く、次いで商業が1,688件(16.5%)、製造業が1,527件(15.0%)、運輸交通業が1,407件(13.8%)となっています。
② 発生月別、曜日別、時間別の業務上腰痛件数
発生月別では、8月が962件(9.4%)と最も多く、12月が689件(6.7%)と最も少なくなっています。気温の低い11月から1月に発生頻度は低下する傾向にあるようです。
発生曜日別では、月曜日が2,007件(19.7%)と最も多く、日曜日が722件(7.1%)と最も少なくなりました。
発生時間別では、10時台が1,436件(14.1%)と最も多く、次いで11時台が1,335件(13.1%)、9時台が1,247件(12.2%)と続き、約4割が午前中(9時から12時)の時間帯
に発生していたことになります。
③ 事業場規模別の業務上腰痛件数
労働者数10-49人が3,666件(35.9%)と最も多く、次いで100-299人が2,222件(21.8%)、50-99人が1,894人(18.6%)となっています。産業医や衛生管理者の
選任義務のない事業規模における件数の多さが目立つ結果となっています。

2.腰痛の労災認定基準
それでは次に、腰痛が業務上の労働災害として認定される基準は、どのようになっているのかを、ご案内いたします。
① 災害性の原因による腰痛
負傷などによる腰痛で、次の①、②の要件をどちらも満たすもの
・ 腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること
・ 腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること
② 災害性の原因によらない腰痛
突発的な出来事が原因ではなく、重量物を取り扱う仕事など腰に過度の負担のかかる仕事に従事する労働者に発症した腰痛で、作業の状態や作業期間などからみて、
仕事が原因で発症したと認められるもの

(出所:厚生労働省リーフレット「腰痛の労災認定」)

②については、日々の業務による腰部への負荷が徐々に作用して発症した腰痛を指しており、例えば「毎日数時間程度、腰にとって極めて不自然な姿勢を保持して行う業務」
による腰痛は労災補償の対象となるとしています。
しかしながら、この例示では配電工の柱上作業など、腰に負荷のかかる姿勢を止む無くされる業務をあげており、冒頭のテレワークのような長時間のデスクワークについては、
業務中であっても、腰を伸ばすことなどが可能であることから、労災認定される可能性は低いと考えられています。
3.さいごに
今回ご紹介した報告書の結果が示すように、業務上の腰痛には、一定の傾向が存在しています。また、労災認定の基準を示しましたが、テレワークにおける例もあるように業務上に
あたるか否かに関わらず、腰痛を伴って仕事をすることは、業務効率の低下を招くことから、対策は重要となります。

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